2025年、焙煎の大会「1st Crack Coffee Challenge」で、FUKUSUKE COFFEEの榊大介が優勝しました!
2022年に代表の三浦が同じ大会で優勝しているので、FUKUSUKE COFFEEとしては2度目の日本一。小さなロースタリーから、2人のチャンピオンが生まれたことになります。
今回は榊本人に、コーヒーとの出会いから日本一になるまでの道のりを語ってもらいました。
郵便局の帰り道で
FUKUSUKE COFFEEとの出会いは、ほんとうに偶然でした。
郵便局の帰り道に、改装中の建物があったんです。ふと覗いたら、エスプレッソマシンが置いてある。「なんだろう、ここ」って。

すぐにInstagramで調べて、クラウドファンディングで手に入れたマグカップを握りしめて、オープン初日に行きました。
そこからは、ほぼ毎日通いました。笑
仕事帰りにカウンターに座って、コーヒーを飲みながら三浦さんと話をして。気がつけば「一緒に働かないか」という話になって、3年前からスタッフとして働いています。
トレーナーとコーヒー
本業は、パーソナルトレーナーです。日本スポーツ協会のアスレティックトレーナーとして、パーソナルトレーニングや子どもの運動教室をやっています。

コーヒーとの最初の出会いは、キャンプでの手網焙煎でした。自分の手で豆を煎るのがおもしろくて、すっかりハマってしまって。
そしてFUKUSUKE COFFEEで三浦さんが焙煎している姿を見たとき、「かっこいいな、自分もやりたいな」と素直に思いました。
トレーナーとして体を整える仕事と、焙煎士としてコーヒーを届ける仕事。まったく違うように見えるかもしれませんが、自分の中ではつながっています。

運動で体を整えて、コーヒーで人生を豊かにする。その両方を届けられる場所がFUKUSUKE COFFEEだったんです。
「今年、出ましょう」

1st Crack Coffee Challengeは、35歳以下の焙煎士だけが出場できる大会です。
コーヒーの焙煎をやるからには目標を決めて焙煎に取り組みたいと思っていたので、2026年の大会を目標にしていました。でも三浦さんから「今年出ましょう」と言われて、前倒しで挑戦することになりました。笑
この大会、予選がかなり独特です。
まず全競技者に同じ「モデル焙煎豆」が届きます。この豆をカッピングして特徴をつかみ、自分の焙煎環境でできるかぎり同じ味わいを再現する。それが予選の課題です。

甘さの出し方、酸の質、ボディの重さ。モデル豆の焙煎をどう読み解くかが問われます。
焙煎した豆は、1次予選でFT-IR(赤外分光分析)とアグトロンスケールにかけられます。赤外光を照射してコーヒーの成分組成を分析し、焙煎度の色味も数値化する。モデル豆との差が小さい人ほど上位に残る仕組みです。
2次予選では、ガスクロマトグラフィーによるアロマ分析が加わります。焙煎豆から香り成分を抽出して、一つひとつ分離・同定し、モデル豆との差異を評価する。感覚だけでは絶対に通用しない世界です。
そしてプロの審査員によるカッピング審査。科学分析と官能評価の両方をくぐり抜けて、100名のエントリーから決勝に進めるのはわずか6名。
準備の日々は、とにかくできることを全てやりたくて、考えられることは全てやり尽くしました。
過去の大会動画をひたすら観ました。審査員がどんな方かを調べました。少ないサンプル豆をカッピングして、味わいを記憶することに集中しました。
営業用の焙煎とは違って、極端に温度を変えたり、時間を大きくずらしたりして、味がどう変わるかを確認する。普段の焙煎ではやらないことをたくさん試しました。
スタッフのみんなにも何度も味やプレゼンの感想をもらいながら、試行錯誤を繰り返す毎日でした…
大変だったのは、限られたサンプルで味を覚えきること。でもトライ&エラーを繰り返せたこと自体が楽しかった。やるたびに発見があり、さらに自分の焙煎の技術と思考力が成長しているように感じられて、とても充実していました。
決勝の舞台で
決勝では、事前に焙煎した豆でウェルカムドリンクをつくり、プレゼンテーションを行います。審査員4名の総合評価で優勝者が決まります。
自分が試行錯誤の末、生み出したテーマは、「五感で味わう」でした。

コーヒーが人生を豊かにしてくれるのは、人間に五感があるから。
知識として「知っている」ことと、体験を通じて「分かる」ことは違う。その違いを目の前の一杯で感じてもらいたい。そう思いました。
プレゼンでは、解剖学者の養老孟司さんの「文武両道」という言葉を引用しました。
「文」は学び、つまり脳への入力。「武」は運動や体験、つまり脳からの出力。その両方がそろって初めて、ものごとは本当に「分かった」状態になるという考え方です。
これはトレーナーとして日々感じていることでもあります。知識だけでは体は変わらない。体験が伴って初めて、自分のものになる。コーヒーも同じだと思っています。
では、どうすれば体験として記憶に残るか。
自分が考えたのは、審査員に目を閉じてもらうことでした。

人間は情報の80%以上を視覚に頼っています。あえてそれを遮ることで、ふだん意識しない感覚が目を覚まします。
会場がシーンと静まり返って、ドリップの音だけが響く。お湯が粉に触れる音。サーバーに落ちる雫の音。鼻をくすぐるように広がっていく、コーヒーの香り。
あの空間は、自分にとっても特別なものでした。

抽出には、HARIOの浸漬式ドリッパー「スイッチ」とメテオフィルターを使いました。まず95度のお湯で浸漬させてから、スイッチを開いて透過に切り替え、途中から55度に温度を下げたお湯をゆっくり注いでいく。前半で良い酸味や甘みを引き出して、後半で苦味や雑味を抑えるという狙いです。
目を開けてもらった後は、ORIGAMIのバレルフレーバーカップという取っ手がないカップでコーヒーを提供しました。
手のひらで包むように持つから、温度がそのまま肌に伝わる。
まず手で温かさを感じてもらい、香りを深く吸い込んでもらい、それからゆっくりとひと口。味覚だけでなく、触覚も嗅覚もすべて使って一杯を味わってほしかったんです。
使った豆は、エチオピアのモルケ ナチュラルとカラモ アナエロビック ナチュラルのブレンドです。

どちらもエチオピアCOE初代チャンピオンのニグセゲメダさんが手がけたロットで、りんごのようなみずみずしい香りと、明るい酸味、まろやかな口当たりが特徴です。FUKUSUKE COFFEEでも毎年取り扱いをさせていただいている、思い入れのある生産者の豆でした。
この豆が育つエチオピア・シダマ地方は、標高が高く平均気温が低い場所です。その環境でゆっくりと熟すからこそ、フルーティーな味わいが生まれます。
けれど気候変動の影響で、将来的にはこの地域の40%がコーヒー栽培に適さなくなるとも言われています。
AI選別機にかけたとき、欠点豆がわずか2%しかなかったんです。それは現地の生産者の方が一つひとつ丁寧に手をかけてくださっている証だと思います。
こうした事実を知った上で、コーヒーを五感で味わう。知識と体験が結びつくその瞬間こそが、他人ごとを自分ごとに変えてくれるのではないか。それが、自分がプレゼンで伝えたかったことでした。
最後に語ったのは、トレーナーとしてずっと大切にしてきたことです。
コーヒーを届ける側の人間が、心身ともに健康でなければ、お客様に幸せな体験は届けられない。体を整え、感覚を研ぎ澄ませ、その状態で丁寧に一杯を届ける。それが自分にできることだと思っています。
決勝のプレゼンをつくるにあたっては、三浦さんの過去のプレゼン動画を誰よりも観ました。何を伝えたいか、自分にできることは何か。それをいろんな人に聞いてもらいながら、どうしたら届くかをずっと考えていました。
準備をやり切ったと思えるくらい練習したので、当日は意外と落ち着いていました。緊張はもちろんあったけど、楽しめたのを覚えています。
シーンとした空間にドリップの音だけが響いて、「コーヒーっていいな」と改めて思いました。
大会を通じて気づいたことがあります。想いは、工夫しないと伝わらないものもあるということ。挑戦することで初めて得られる学びがあるということ。これは自分にとって、とても大きな収穫でした。
日本一、そしてこれから
結果は、168点で優勝という最高の形で終えることができました。

奇しくも三浦さんが2022年に優勝したときのスコアも、同じ168点だったと聞きました。
優勝が決まったとき、まずホッとしました。チームフクスケのみんなに、少しは恩返しができたのかなと。
同時に、チャンピオンという名に恥じないようにしないとというプレッシャーもあります。

でも間違いないのは、フクスケコーヒーを世界に広めるために身を粉にして働くということです。
自分がコーヒー屋さんで働きたいと思ったのは、運動で体を整えて、コーヒーで人生を豊かにできると思ったから。その想いはこれからも変わりません。
あの日、郵便局の帰り道にふと目にしたエスプレッソマシンが、ここまで連れてきてくれました。
これからもFUKUSUKE COFFEEで、みなさんに一杯をお届けしていきます。

あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
・このコーヒー、どう選べばいい?
・プレゼントで失敗しないコツを知りたい
・浅煎りって、正直よくわからない
・こんな話、読んでみたい
・最近こんなことで悩んでいます
などなど、どんな小さなことでも大丈夫です。
ふと感じた疑問や、知りたいこと、悩んでいることを、そっと教えてください。
いただいたお声は、次の読みものや商品づくりのヒントとして、ひとつひとつ、大切に活かしていきます。

FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー

