10月、FUKUSUKE COFFEEの焙煎機が入れ替わります。
オランダのGisen(ギーセン)という会社がつくる、W6Aという焙煎機です。
その工場に、焙煎士の榊が行ってきました!焙煎大会「1st Crack Coffee Challenge」で優勝したときの副賞です。
行き先はオランダの、地図で探さないと出てこないような町。ここから先は、榊本人の言葉でお届けします。
榊の1st Crack Coffee Challenge優勝までの道のりはこちらからご覧いただけます↓
飛行機の窓の下に、風車がびっしり
5月25日の朝7時、アムステルダム空港に到着しました。
着陸前、窓の外を見たら風車だらけでした。絵本やテレビで見たあれが、生活の風景として地平線まで並んでいるのをみて、ワクワクがさらに強まりました。

香港を経由して、飛行時間だけで約13時間。オランダって、思っていたよりずっと遠いところなんですね。
朝ごはんを食べにアムステルダム市内のカフェへ向かいました。朝から人でいっぱいです。

コーヒーとシナモンロールを頼んで、店内でゆっくりと過ごしました。

いちばん印象に残ったのは、味よりも店員さんでした。
気さくで、話しやすくて。お客様と店員さんという線引きがなくて、友達と喋っているみたいなんです。
日本のお店とは、空気の作り方がまるで違ったのがとても印象的でした。
「なんで、そんな所に行くの?」
その足で、ギーセンの工場に近いドゥーティンヘムという町へ移動しました。

行き方を車掌さんや地元の方に聞くたびに、「なんでそんな所に?」と驚かれるんです。
聞くところによると、ここはドイツとの国境沿いで、観光で来る人はほとんどいないらしくて。
着いてみたら本当にその通りでした。アムステルダムとは打って変わって観光客の姿がなく、アジア人は私たち以外に一人も見かけませんでした。

宿泊先のオーナーにも、「なんでこんな所に来たんだ!?」と同じことを聞かれました。笑
コーヒーの焙煎機を見に来たんです、と答えたら、返ってきたのが思いがけない一言でした。
「私も地元のコーヒー屋を引き継ぐんだ。一緒に店に行かないか」
嬉しくて、即答でイエスと言いました。
連れて行ってもらったのは、Venetië という老夫婦のお店。地元の方にずっと愛されてきた、町の焙煎屋さんです。

そこで聞いて驚きました。この老夫婦、ギーセンの創業者と古くからの友人で、お店の焙煎機もそうやって受け継がれてきたものだというんです。
焙煎機を見に地球の反対側まで来て、初日の夜に、その焙煎機をつくった人の友人の店に座っている。
ご縁ってつながるものだなあ、と感慨深いものがありました。

オランダで、まさかの体調不良に…
二日目はドゥーティンヘムを歩いて回るつもりでした。
つもりだったんですが…たぶん熱中症で、半日は宿でおとなしくしていました。
なので、この日は写真がありません(ごめんなさい)
滞在した一週間は雨がまったく降らず、オランダでは珍しい30度超え。太陽が近いんじゃないかと思うくらい、日差しが強いんです。
そのうえサマータイムで、夜10時まで明るい。
三日間で一番きつかったのは、これでした。体がいつまでも夜だと認めてくれない感じがすごくもどかしかったです。
道路の向こう側は、もうドイツ
5月27日、見学の日。
ドゥーティンヘム駅から車で30分ほど走りました。
途中で、この道路の反対側はドイツだよ、と教えてもらいました。
半信半疑で車のナンバープレートを見たら、確かに色が違う。同じ道を、二つの国の車が走っているんです。
そこに、目的地のギーセンファクトリーがありました。

扉を開けて、出迎えてくれたのはギーセンチームの皆さんと、W6Aの初代でした。

これから僕たちが使う焙煎機の先祖にあたる、いちばん最初の一台に歴史を感じて、とても気分が高揚してきたのを覚えています。
金属加工屋が、焙煎機メーカーになった日
このW6Aという機械、ギーセンにとってはただの人気機種ではありません。
ギーセンのはじまりは、1988年、オランダのウルフトという町にあった「De Eik」という金属加工の会社です。焙煎機の部品をつくっていました。
創業者のブッシンクさんが早くに亡くなり、娘のカリンさんと、その夫であるウィルフレッド・ギーセンさんが事業を継ぎます。
部品をつくり続けて十数年。ウィルフレッドさんは、市場にある焙煎機を見ながら「もっとこうできるはずだ」と考えていたそうです。
そして2006年、自分たちで一台まるごとつくることを決めました。
そうして生まれたのがW6Aです。

この一台が世に出た瞬間に、De Eik は Giesen Coffee Roasters になりました。
会社の名前が変わった、その分かれ目にいた焙煎機。
入口で私を出迎えてくれたのは、そういう一台でした。そして10月に福助へ来るのも、同じW6Aです。
いきなり「焼く?」と言われまして
ウェルカムドリンクにエスプレッソをいただいて、ひと息ついたところで言われました。
「じゃあ、さっそく焼く?」
FUKUSUKE COFFEEで現在使っているのはDIEDRICH(ディードリッヒ)という焙煎機で、私はそれ以外の焙煎機を触ったことが一度もありません。

現在FUKUSUKE COFFEEで使っているディードリッヒ
しかも、渡された豆は「これ適当に」という感じで。たぶんグアテマラだったと思うんですが、正直あやふやです。
操作の説明も特になし。
もう、がむしゃらにやりました。日本の焙煎チャンピオンだよって紹介されている中、操作もあまりわからず、緊張しすぎて、あたふたしながら焙煎を行いました。笑

それでも、手を動かしながらはっきり感じたことがあります。
ディードリッヒと比べて、機械そのものの重心が低いというか、どっしり構えている感じがあるんです。
蓄熱もかなり高そうだな、と焙煎中の手応えで確信できる何か特別な感覚を感じました。
この焙煎機を、FUKUSUKE COFFEEで毎日使う日が来る。そう考えたら、緊張の向こう側からじわじわ楽しみが湧いてきました。
一人が一台に責任を持つ。圧倒的なクラフトマンシップ。
焙煎のあとは、工場のなかを見せてもらいました。

まず目に入るのが、板の厚さと釜の厚さです。分厚い。何もかもに重量感があって、組み上がる前の状態を見ているだけで、これは熱を溜め込むだろうなと分かる。
W6Aは本体だけで485kgあります。ドラムに入る豆は最大6kg。
面白かったのは、一台の焙煎機を一人の職人さんが担当する仕組みになっていたことです。
よく車の工場などで見る、パーツごとに分業するような流れ作業ではないんですね。
職人さんたちは作業服姿で、ときどき仲間と喋って笑っていました。でも手元に目を戻した瞬間の目つきが、まったく違うんです。
楽しそうなのに、鋭い。(恐れ多くて写真をとる勇気がでませんでした。笑)
あの切り替わりを間近で見て、職人魂という言葉が頭に浮かびました。クラフトマンシップというのは、こういう空気のことを言うんだと思います。
そして、世界中のロースターへ
倉庫には、完成した焙煎機が木箱に詰められて並んでいました。

貼られた宛先を見ていくと、中東、アジア、ヨーロッパ。世界中の町の名前が出てきます。
これが全部、このオランダの片田舎でつくられている。
そして10月には、この木箱のひとつが愛知県安城市に届きます。
自分たちの焙煎機が生まれる場所を、生まれる前に見ておけた。このタイミングで来られて、本当によかったと思いました。
もうひとつの工場へ
見学したのは、新しくできた工場のほうです。ここで焙煎をさせてもらい、製造ラインを見せてもらいました。
そこから車で15分ほど走って、古いほうの工場にも行きました。
古い工場では、小型機ではなく大型機を中心につくっているそうです。
大きさが変われば、鉄の厚みも溶接の規模も変わります。それでも、職人さんの手つきと目つきは、新しい工場で見たものとまったく同じでした。
生産地の話だけでは、おいしいコーヒーにならない

三日間を振り返って、一番心を動かされた場面ははっきりしています。
ギーセンの職人さんが、黙々と作業している姿です。
1st Crack Coffee Challengeでも、私は生産地の話をしました。農園のこと、精製のこと、生産者の努力のこと。
大事な話です。でも、それだけでは一杯のコーヒーはおいしくならないんですよね。
焙煎機をつくっている職人さんも、私たちにおいしいコーヒーを届けてくれている。
分厚い鉄板を切って、溶接して、一台ずつ組み上げて、木箱に詰めて、遠い国のロースターに送り出す。
そんな、あの人たちの素晴らしい手仕事が入っていなければ、僕たちもコーヒー豆を焙煎することはできません。
当たり前のことではあるのですが、工場の床に立って、それが初めて実感できて、すごくいい経験になりました。
10月、安城市に届きます

FUKUSUKE COFFEEの焙煎機は、ディードリッヒからギーセンW6Aへ入れ替わります。
機械が変われば、豆への熱の入り方も変わります。
これまでの味を守るところと、新しく踏み込めるところを、これから一つずつ確かめていく時間になります。
その最初の一杯を、楽しみに待っていてください。
オランダの片田舎で職人さんが作り上げた最高の一台が、愛知県安城市のFUKUSUKE COFFEEで美味しいコーヒーを焼き上げる。
そんなところにも思いを馳せながら飲むコーヒーも、また違った楽しみになると思います。
僕たちもその日を楽しみに、これからも真心と福を乗せて、美味しいコーヒーをお届けします。

あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
・このコーヒー、どう選べばいい?
・プレゼントで失敗しないコツを知りたい
・浅煎りって、正直よくわからない
・こんな話、読んでみたい
・最近こんなことで悩んでいます
などなど、どんな小さなことでも大丈夫です。
ふと感じた疑問や、知りたいこと、悩んでいることを、そっと教えてください。
いただいたお声は、次の読みものや商品づくりのヒントとして、ひとつひとつ、大切に活かしていきます。

FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー


