「今日も、いつもの味だった」
そう思える朝が増えてくると、コーヒーを淹れる時間がぐっと楽になります。
ハンドドリップを4年5年と続けていると、味そのものより、毎回の味のばらつきが気になり始める方が多いんですよね。「先週はあんなにおいしかったのに、今日はなぜか違う」「同じ豆、同じレシピのはずなのに、ぶれてしまう」と。
このページでは、味のブレを小さくしていくための、考え方と日々の工夫についてお話しします。
味のブレが何によって起きているか、つまり「何を変えると何が変わるか」については、別の読みもので詳しくご紹介しています。
先にそちらを読んでいただくと、今日のお話がよりスッと入ってくると思います。
再現性は、「淹れ方」ではなく「準備」で決まります

再現性を高めたいとき、多くの方は「淹れる動作」に意識を向けがちです。注ぎ方を練習したり、お湯を細く落とす技術を磨いたり。
もちろんそれも大切なのですが、味のブレを生んでいる原因の多くは、淹れる前の段階にあるんです。
豆の量を測ったか。お湯の温度はそろっているか。ミルの設定は前回と同じか。今日の豆は、いつから開封したものか。
こうした「淹れる前のセットアップ」が揃っていないと、どんなに注ぎ方を整えても、味は揃いません。逆に言えば、淹れる前の準備さえ揃えば、注ぎ方の多少のばらつきは吸収されるんですよね。
ですから、再現性を上げたいときは、まず「淹れ方」よりも「準備の手順」を見直してみてください。
自分のレシピを、文章で決めてみましょう

意外と多くの方がやっていないのが、「自分のレシピを言葉で固定する」ということです。
「だいたい10gで150mlくらい」「お湯はちょっと冷ましてから」というふうに、頭の中ではなんとなく決まっているけれど、書き出してはいない。
このあいまいさが、ブレの大きな原因になっているんです。
書き出しておくと、自分のなかの基準がはっきりします。
豆の量、お湯の量、湯温、挽き目、蒸らし時間、注ぎ方の全体像。これを紙やメモアプリに残しておいてください。
たとえば「豆10g、湯150g、湯温88℃、中挽き、30秒蒸らし、合計2分30秒以内」というふうに。
最初は完璧な数値にする必要はありません。今いちばんおいしいと感じた一杯の条件を、なるべく具体的に書き残す。それが、自分の基準になっていきます。
道具を固定すると、ブレ幅はぐっと小さくなります

道具を毎回違うものに変えていると、当然ながら味も変わります。
ドリッパーひとつとっても、円錐型と台形型では抽出の挙動がまったく違いますし、メーカーが違えばリブの形や穴の大きさも違うんです。
味の再現性を高めたい時期は、道具をひとつに固定してみてください。ドリッパー、フィルター、ミル、ケトル、スケール。この5つを毎回同じものに揃えるだけで、ブレ幅はぐっと小さくなります。
特に挽き目を決めるミルは、安定感への影響が大きいんですよね。家庭用の手挽きミルでも、毎回同じ目盛りで挽くようにすれば十分に再現性は出せます。電動ミルなら、ダイヤルの数字をメモしておくと迷いません。
「いろいろ試したい」という気持ちがあるのもよくわかります。でも、ブレに悩んでいる時期は、まず一通り固定してみる。それから少しずつ要素を変えていくほうが、味の違いも見えやすくなります。
毎回同じ順番で、同じ動きをする

再現性を支えているのは、技術というよりも「ルーティン」です。
たとえばお店でいつも淹れている私たちも、ふだんの動作はほぼ決まっています。
豆を量る前にスケールをリセット、フィルターをリンスして温度を上げる、ドリッパーをサーバーにのせる、粉を入れて軽くトントンと均す、タイマーをお湯を注いでタイマーを押す。
この一連の流れを毎回同じ順番でこなすことが、安定した味の支えになっているんです。

順番が違うと、些細なところで時間がずれます。フィルターをセットしてから粉を量っていると、その間にケトルのお湯の温度が下がっていく。粉を均し忘れると、お湯の浸透の仕方が変わる。
一つひとつは小さいのですが、積み重なると味の輪郭が変わってしまうんですよね。
「いつも同じ動作で淹れる」と決めてしまう。これだけで、再現性はかなり上がります。
「記録する」が、いちばん効きます

これはぜひ試していただきたいのですが、淹れた日の状態を簡単にメモしておくことをおすすめします。
書くのはたった3つで大丈夫です。
豆の名前と焙煎日からの経過日数。レシピのなかで変えた点があればそれ。そして「おいしい・いつもどおり・少し違う」のざっくりした印象。
これだけを続けていると、自分のなかにパターンが見えてきます。「焙煎日から10日くらいがいちばんおいしい」「湿度が高い日は少し早く落ちる」「あのコーヒーは88℃より86℃のほうが好きだった」と。
ブレを「失敗」と捉えるのではなく、「観察の材料」に変えてくれるのが、この小さな記録の力です。
スマホのメモでも、手帳の隅でも構いません。3か月続けると、自分専用の「美味しさにつながる要素」が積み上がっていきます。
季節や豆の変化は、揃えないでください

ここまで「揃える」「固定する」というお話を続けてきましたが、ひとつだけ揃えなくていいものがあります。
それが、季節や豆の状態に合わせた微調整です。
夏と冬では、ケトルから注いだお湯が粉に届くまでの温度の落ち方が違います。湿度の高い日は粉が湯を含みにくく、乾燥した日は抜けが早くなります。
焙煎日から日が浅い豆はガスが多く、時間が経った豆は穏やかに抽出が進みます。
こうした変化に対しては、レシピを少しだけずらしてあげる必要があります。
たとえば真冬には湯温を1〜2℃上げる、焙煎から3週間以上経った豆は蒸らしを5秒短くする、というふうに。
「再現性を高める」というのは、「機械のように同じことをする」ではなくて、「同じ味を保つために、目に見えない変化に気づいて手当てする」ということなんですよね。
これができるようになると、コーヒーを淹れる時間は、ぐっと深いものになります。
完璧な再現性は、目指さなくていいんです

最後にひとつ、お伝えしておきたいことがあります。
毎回まったく同じ味を再現することは、プロのバリスタでも難しいことなんです。
私たちも毎日のように練習や研究を重ねていますが、基準を上げれば上げるほど、揃わない瞬間が見えてきます。同じ豆でも、その日の湿度や気温で抽出は微妙に違う動きを見せるんですよね。
ですから、目指していただきたいのは「完璧に同じ」ではなく、「自分の合格ラインを下回らない」というイメージです。
80点が毎日続くことのほうが、100点とハズレが交互に来るより、ずっと幸せなコーヒー時間につながります。
ブレ幅を小さくする。それが再現性の、いちばん現実的なゴールです。
安定した一杯が、明日のコーヒー時間を変えてくれますように

毎日のコーヒーが安定してくると、自然と「この豆、もっと好きになってきた」という感覚が芽生えてきます。
不安定だったころは「今日のはハズレかも」と身構えながら飲んでいた一杯が、「いつもの味だ」と安心して受け取れるようになる。それは、淹れる人の小さな自信にもつながっていくんですよね。
レシピを書き出す。道具を固定する。同じ順番で淹れる。記録を残す。
たったこれだけのことで、毎朝のコーヒーは見違えるように落ち着いてきます。
「昨日のあのおいしさを、今日も飲みたい」
その願いがちゃんと叶うようになる日まで、私たちは小さな工夫をお届けしていきます。一杯のコーヒーが、あなたの今日にそっと寄り添えますように。
あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
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FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー


