基本のアイスコーヒーは、もう自分の手で作れるようになった。
そんな方にこそ、今日はもう一歩だけ踏み込んだお話をさせてください。
これは、FUKUSUKE COFFEEが実際にお店でアイスコーヒーを淹れるときに、私たちが実際にやっていることを、できるだけそのままお伝えするレシピです。
正直に言うと、ちょっと手間がかかります。ケトルも2本いります。
それでも、淹れ終えたグラスに口をつけたとき、「やってよかった」と思える一杯になるはずなんです。
まだ急冷アイスコーヒーを淹れたことがない、という方は、先にこちらの簡単なレシピの方から触れてみてくださいね。
そのうえでこちらに戻ってきていただけたら、きっとこの読みものがもっと面白く感じられると思います。
「急冷」が目指している、クリアな一杯のこと
急冷というのは、淹れたての熱いコーヒーを、氷で一気に冷やす淹れ方です。
サーバーに氷を入れて、その上からドリップしたり、ドリップし終わったコーヒーを氷一杯のグラスに一気に注ぐ方法など色々ありますが、当店では後者の方法をとっています。

香りの立ち方が、水出しとはまた違うもの。
熱で引き出された華やかな香りを、冷たさのなかに閉じ込める。そういうイメージなんです。
ただ、急冷はごまかしがききにくい淹れ方でもあります。
抽出のわずかなズレが、冷えたときの渋みや雑味として、はっきり残ってしまうんですよね。
だからこそ、私たちが目指すのは「クリアさ」です。
フルーツのような甘い香りと酸味はしっかり感じられて、それでいて後味に嫌な引っかかりがない。
そんな一杯を、どうやって組み立てているのか。
抽出中に考えていることから、レシピの詳細まで、包み隠さずに順番にお話ししていきます。
まず、道具と豆のこと
使う道具は、シンプルです。
ドリッパーはORIGAMIのAIR S、フィルターはAbaca Plusを合わせています。お店で使っているものと同じです。

ケトルは、できれば2本。後でお話しする「二段階の湯温」のためなんです。
そしてスケールとタイマー。この2つは、上級の淹れ方になるほど手放せなくなります。
豆は、フルーティな浅煎りや中浅煎りがよく合います。
急冷は香りの立ち方が主役になる淹れ方なので、もともと華やかな個性を持った豆だと、その魅力がぐっと際立つんです。
どの豆にしようか迷ったら、お店でもお気軽に聞いてくださいね。その日の気分に合わせて、一緒に選びましょう。
レシピの全体像
数字をまとめておきます。手元に置いて淹れてみてください。
- 豆:20g(中〜中細挽き)
- お湯:合計150g(豆の約7.5倍)
- 温度:前半は93℃、後半は60℃
- 氷:100gくらい
- できあがり:1杯分
挽き目は、お店ではEKグラインダーで8.7〜8.9あたり、コマンダンテなら28〜32クリックを目安にしています。
お持ちのミルがあれば、近い番手から試してみてくださいね。なければ、まずは「中〜中細挽き」で大丈夫です。
淹れる前の、ふたつの下ごしらえ
ここ、地味ですが大切な工程です。
ひとつめは、ペーパーフィルターをドリッパーにセットして、お湯を通しておくこと。

このとき、フィルターがドリッパーにぴたっと密着するようにしてあげてください。
フィルターが浮いていると、お湯が思わぬ方向に流れてしまって、抽出にムラが出てしまうんです。
ふたつめが、粉を入れる前のひと手間です。
ドリッパーに粉を入れる前に、コーヒーの粉が入っている容器を上下左右へ2〜3回揺すってあげてください。
中挽きといっても、実は細かい粉から大きめの粉まで、いろんなサイズが混ざっています。
ふることで粉のかたよりがならされて、お湯が均一に流れる道ができるんですよね。
この均一な流れが、チャネリングという「お湯の通り道のかたより」を防いでくれます。
チャネリングが起きると、渋みや苦味が出やすくなってしまうんです。
だまされたと思って、ふったときとふらなかったときを飲み比べてみてください。けっこう味が変わるはずです。
二段階の湯温、という考え方

ここが、この淹れ方のいちばんの肝です。
前半は93℃の高温で、攪拌しながら注ぐ。後半は60℃まで温度を落として、中心にそっと注ぐ。
なぜ、わざわざ途中で温度を変えるのか。
理由は、コーヒーから出てくる成分の順番にあります。
抽出の前半には、フルーツのような酸味や甘みといった、いちばん美味しい部分が出てきます。
だから前半は、高い湯温と攪拌でしっかり引き出してあげたいんです。
攪拌とは、注いだお湯の勢いでコーヒーの粉をかき混ぜるようなイメージを持っていただくと良いかと思います。

ただし、攪拌しすぎると今度は苦味や渋みまで出てきてしまうので、バランスがとても大切になります。
そして抽出の後半。ここからは、苦味や渋みの成分が出はじめます。
そこで湯温を下げて、攪拌も控えめにする。抽出のスピードをあえてゆるめて、雑味が出てくるのを抑えるんですね。
おいしいところはしっかり、雑味になりそうなところはそっと。
実はこの考え方、お店でホットコーヒーを淹れるときとまったく同じなんです。私たちが日々向き合っている淹れ方を、そのままアイスに持ってきています。
抽出の手順
ここからは時間軸で。スケールとタイマーを見ながら進めてください。
タイマーの時間 / スケールに表示されるg数 / お湯の温度をベースにお伝えしていきますね。
0:00〜 湯量30g(湯温93℃)

①乾いた粉全体が濡れるように注ぎます。このとき、なるべく早く全体にかけてあげてください。少し慌ただしいですが、粉が最初のお湯に触れた瞬間にタイマーをスタートします。
粉ごとの抽出のズレが減って、雑味の少ない仕上がりになります。
ここで少し詳しい方はあれ?と思うかもしれませんが、その通りです。蒸らしは10秒としています。
0:10 湯量70gまで(湯温93℃)

②スケールの表示が30gから70gになるまで、渦を描くように、全体へ均一に注ぎます。
0:20 湯量90gまで(湯温93℃)

③スケールの表示が70gから90gになるまで、ドリッパーの中心へ、ゆっくりと注ぎます。
0:30 湯量120gまで(湯温60℃)

④ここでケトルを60度の方に持ち替えます。スケールの表示が90gから120gになるまで、中心にゆっくりと注いでください。
0:40 湯量150gまで(湯温60℃)

⑤同じく中心へ、スケールの表示が120gから150gになるまで、ゆっくりと注ぎます。
1:10〜1:30

⑥だいたいタイマーが1:10〜1:30を表示している間で、落ちきりを待つか、途中でドリッパーを引き上げて(カットして)かまいません。
氷いっぱいのグラスに注いで完成!

⑦最後に、氷を入れたグラスへ一気に注いで完成です!!
熱いコーヒーが氷に触れた瞬間の、ふわっと立ちのぼる香り。これが急冷ならではの楽しみだと思うので、ぜひ存分に堪能してみてくださいね。
香りを頼りにする、という上級者向けアドバイス
ここまで読んでくださった方には、もうひとつだけ。
慣れてきたら、ぜひ「香り」を手がかりにしてみてください。数字だけでは届かない領域が、そこから先に広がっています。
まずは、挽いた粉の香りです。

コーヒーミルやグラインダーの挽き目を0.1メモリずつ動かしてみると、香りが少しずつ変わっていくのがわかります。
雑味のある香り、苦そうな香り、そして甘くてクリアな香り。
その「甘くて雑味のない香り」のポイントを探して、挽き目を微調整していくんです。
フルーティな豆だと、このときびっくりするくらいフルーツみたいな香りがします。
そしてもうひとつが、抽出している最中の、ドリッパー無いのお湯の表面から立ち上がるコーヒーの香りです。

お湯を注ぎ終えて次のお湯を注ぐまでの間に香りを嗅ぎ続けると、いろんな香りが立ち昇っていることに気がつくと思います。
そして最後の一投を注ぎ終えたあとに、苦味を連想する香りや穀物っぽい香りがふっと立ちのぼる瞬間があります。
その瞬間にドリッパーをカットすると、雑味が引き出され切ってしまう手前で抽出を止められて、クリアな一杯になるんです。
カットが早すぎると、今度は酸っぱくなってしまいます。雑味が出てくるその一瞬を狙うのが、なかなか奥が深いところなんですよね。
粉の香りと、できあがった液体の味わい。淹れる回数を重ねるほど、このふたつが想像以上に重なってくるのを感じられるはずです。
味わいと、失敗との付き合い方
うまく決まると、風味はしっかり、それでいて雑味のない、すっと澄んだアイスコーヒーになります。

ひと口飲んで、思わず「お」と声が出るような。そんな一杯を、ぜひ目指してみてください。
そして、ここはお伝えしておきたいのですが。
これくらい突き詰めた淹れ方になると、毎回ぴたっと同じにはなりません。でも、それでいいんです。
「前回は2投目の攪拌(お湯を注ぐ勢い)が強すぎたかもしれないな」
「じゃあ今回は、少しだけ弱めてみよう」
そんなふうに、自分のなかでトライアンドエラーを重ねて、ベストのポイントを探っていく。その工程そのものが、いちばん面白いところなんです。
失敗は、ただの経験値だと思ってください。
豆によっても、ベストな淹れ方はほんの少しずつ変わってくるんです。それでも、レシピの大枠さえ守っていれば、一定の美味しさにはちゃんとたどり着けます。
だから、肩の力を抜いて。何度でも、淹れてみてくださいね。
おわりに

ここまで、お店で私たちが実際にやっていることを、できるだけそのままお話ししてきました。
正直、手間のかかる淹れ方です。
でも、暑い日に自分の手で澄んだ一杯を淹れられたとき、その夏はきっと少しだけ豊かになります。
うまくいかない日があっても、大丈夫。次の一杯で、また試せばいいだけですから。
そして、もし「お店の味も確かめてみたい」と思ったら、ぜひ一度足を運んでみてください。同じ二段階の湯温で淹れた一杯を、カウンター越しにお出しします。
あなたの夏に、澄んだ一杯の福が届きますように。
あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
・このコーヒー、どう選べばいい?
・プレゼントで失敗しないコツを知りたい
・浅煎りって、正直よくわからない
・こんな話、読んでみたい
・最近こんなことで悩んでいます
などなど、どんな小さなことでも大丈夫です。
ふと感じた疑問や、知りたいこと、悩んでいることを、そっと教えてください。
いただいたお声は、次の読みものや商品づくりのヒントとして、ひとつひとつ、大切に活かしていきます。

FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー


