夏になると、お店でよく聞かれることがあります。
「家でアイスカフェオレを作ると、なんだか水っぽくなっちゃうんです」
氷が溶ける。牛乳を足したら薄まる。濃いめに淹れようとして、今度は雑味が強くなってしまう。
そんなお悩みから抜け出す方法があるんです。
それは、水を一滴も使わずにコーヒーの粉を、牛乳そのものに浸してしまう「ミルクブリュー」
ミルク出しコーヒーとも呼ばれる淹れ方です。
水出しコーヒーの、牛乳版

やっていることは水出しコーヒーとほとんど同じなんです。
冷たい液体にコーヒーの粉を浸して、時間をかけてゆっくり成分を引き出す。その液体が水ではなく、牛乳になるだけ。
ふつうのアイスカフェオレは、淹れたコーヒーにあとから牛乳を注ぎますよね。ミルクブリューは順番が違います。
最初から最後まで牛乳の中で抽出が進むので、コーヒーと牛乳が「混ざったもの」ではなく「はじめから一緒だったもの」のような一体感になるんですよ。
そして何より、水で薄まる場所がどこにもない。だからとろりと濃厚で、牛乳の甘さが活きるので砂糖を入れていないのに甘く感じます。
技術はいりません。器具もほとんどいりません。私たちがおすすめするもレシピの中でいちばん失敗しにくい淹れ方だと思います。
用意するもの
必要なのは、粉と牛乳を一晩いっしょに入れておける容器だけ。
水出し用のフィルターインボトルをお持ちなら、それがいちばん楽です。
なくても大丈夫ですよ。おうちにある急須でも作れます。
茶こし(ティーストレーナー)を使う手もあります。

いちばん手軽なのは、お茶パックです。スーパーで売っている、粉を自分で入れるタイプのもの。

ただし、お茶パックはシーラーで口が閉じられているわけではないので、粉が漏れてしまうことがあるんです。
ちゃんと液体に触れているかは要注意ですが、二重にして包んでおくと安心できますね。
分量は、いつものドリップと同じ比率で
- コーヒーの粉 10g(細挽き)
- 牛乳 150g(粉の15倍)
- 冷蔵庫で8〜12時間
粉10gに対して15倍。この比率、当店で初心者の方におすすめしているハンドドリップとまったく同じなんです。
覚えることが増えないのは、地味にうれしいところではないでしょうか。
挽き目は細挽きにしてください。牛乳は水よりもとろみがあって成分が移りにくいので、粉を細かくして表面積を稼いであげます。
お店で豆を挽くときは「ミルクブリューにしたいです。」なんて、ひとこと添えていただければそれに合わせてお挽きしますよ。
水出しコーヒーと同じ挽き目になるので、交互に作って楽しんでもいいかもしれませんね。
手順は4つだけ

- 容器にコーヒーの粉を15g入れる。お茶パックを使う場合は、二重にして口を折り込んでおく
- 150gの牛乳を注ぐ
- 冷蔵庫に入れて、8〜12時間
- 時間がきたら、粉を取り出して完成!
朝に飲みたいなら、寝る前に仕込む。夜に飲みたいなら、出かける前に仕込む。それくらいのゆるさで大丈夫です。
翌朝、冷蔵庫を開けたら完成しています。粉を取り出して、マグに注ぐだけ。
失敗するとしたら、ここだけ
このレシピでつまずくポイントは、たったひとつです。
粉が牛乳に浸りきっていないこと。
乾いたままの粉が残っていると、その分は抽出されません。結果、薄くて頼りない液体になってしまうんですよ。
注いだあとに、粉の全体(特に内側まで)がちゃんと湿っているかだけ確認してみてください。
お茶パックの場合は最初ぷかぷか浮いてしまうと思いますが、中身が湿ってさえいれば問題ありません。そこは気にしなくて大丈夫です。
濃さは、あとから自分で決めましょう

飲んでみて「もう少し濃くほしいな」と思ったら、粉の量を動かしてみてください。
牛乳は150gのままで、粉を10gから12gに。それだけで、ぐっとコーヒー感が前に出てきます。
反対にミルクのやさしさを楽しみたい日は、粉を8gに減らす。
牛乳の量を固定しておくと、できあがる量が変わらないので前回との違いを比べやすいんですよ。
ちなみに、プロはミルクの量を調整するんです

味を調整したいとき。同じことを私たちは逆のやり方でやっています。粉は固定して、液体の量を数グラム単位で増やしたり減らしたり。
なぜかというと、粉1gと液体1gでは、粉1gのほうがずっと大きな変化になるからなんです。
だから細かく詰めていきたいときは、液体側で調整したほうがより細かな調整ができるというわけです。
ただこれは、できあがりの量が多少ぶれても構わないという前提で、かつ本当に細かいところが気になるプロ目線での味わい調整でもあります。
おうちで一杯を作るなら、変化が分かりやすい粉の側を動かすほうが、きっと迷わないはずです。
粉で調整したからといって、劇的に美味しくなくなってしまうほどの変化は起きないので、ご家庭では気にせず粉の量から調整をしてみてくださいね。
長く浸けすぎたら、美味しくなくなる?

これ、お店でもよく聞かれるんです。
先にお伝えしておきたいのですが、コーヒーの苦味はぜんぶが悪者というわけではありません。
深煎りのビターチョコレートのような苦味は、そのコーヒーの持ち味そのもの。あれがなくなってしまったら、ただ物足りないだけの飲みものになってしまいますよね。
気をつけたいのは、苦味ではなく雑味のほうなんです。舌がざらついて、後味にいつまでも残るあの感じ。
雑味は、遅れて出てくる

コーヒーの成分には、出てくる順番があります。
香りや甘さ、心地よい苦味は、比較的早い段階で出そろいます。冷たい液体でも、半日かからないうちに大方は出きってしまうんですよ。
一方で渋味のもとになる大きな分子は、そのあとをゆっくり追いかけてきます。長く浸けたときに増えていくのは、主にこちらのほうです。
牛乳は、味わいにも優しい

ここがミルクブリューの面白いところなんです。
そもそも渋味というのは、コーヒーの渋味成分が口の中で唾液のタンパク質とくっつくことで、舌の表面がざらついて感じられるもの。
ところがミルクブリューでは、まわりが牛乳です。牛乳のタンパク質が、先にその成分と手をつないでしまうんですよ。
紅茶にミルクを入れると渋みがやわらぐのと、同じことが起きています。
だから水出しコーヒーほど、時間の管理に神経質にならなくて大丈夫です。実際に飲み比べてみても、8時間と12時間でそこまで大きな差は感じません。
私たちが「8〜12時間」と幅を持たせてお伝えしているのは、そういう理由からなんです。寝る前に仕込んで、翌朝の都合のいいときに取り出していただければ。
粉っぽさが気になったときは
急須や茶こしで作ると、細かい粉がどうしても底に沈みます。
基本は上澄みを注いでいただくイメージで。
それでも口当たりが気になるようでしたら、注いだあとに目の細かい茶こしでもう一度濾してみてください。ぐっとなめらかになります。
牛乳を使うので、ここだけは丁寧に

水出しと違って、扱っているのは牛乳です。粉と牛乳を入れたら常温には置かず、そのまま冷蔵庫に入れてくださいね。
容器も、きれいに洗ってしっかり乾かしたものを使ってください。
そして8〜12時間たったら、粉を取り出します。そこで味が決まるので、翌日にまわしても同じ一杯を楽しめるんですよ。
牛乳に粉を漬けたままにしておかない、という意味でも取り出しておくほうが安心です。
取り出したあとは、そのまま冷蔵庫で保管を。おいしさの面でも、その日のうちに飲み切っていただくのがいちばんです。
どの豆で作ると、おいしい?

牛乳に負けない存在感がほしいので、深めの焙煎が合わせやすいです。
TENJIN BLENDは、ビターチョコレートのような苦味と、後味に続く甘さが特徴の深煎りブレンド。ミルクの甘さと重なって、まるでチョコレートドリンクのような一杯になります。
Brazilもおすすめです。ローストアーモンドとミルクチョコレートのような風味は、もともと牛乳との相性が抜群なんですよ。
華やかな方向で楽しみたい方は、SAKURAI BLEND。ベリーやハーブのような風味が牛乳をまとって、いつものカフェオレとはまったく違う表情を見せてくれます。
浅煎りだからだめ、ということはまったくありません。手元にある豆でまず一度作ってみて、そこから好みを探していくのがいちばん楽しい進み方だと思っています。
冷蔵庫のドアを開ける、その楽しみ

道具も、技術も、タイマーもいりません。
粉を入れて、牛乳を注いで、あとは眠っているあいだにコーヒーが勝手においしくなってくれる。
翌朝いちばんに冷蔵庫を開けるあの瞬間が、なかなか幸せなんです。
暑い日のひと息に、この濃厚な一杯をぜひ試してみてくださいね。福のある夏のコーヒー時間になりますように。
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FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー

