パートナーや友人がコーヒーを淹れている姿を眺めていて、ふと思ったことはないでしょうか。
「あの道具、なんて名前なんだろう」
ドリッパー、サーバー、フレンチプレス。 コーヒーの世界には、聞き慣れない名前がいくつも出てきます。
全部を覚える必要は、まったくありません。 よく使うものだけ、なんとなく分かっていれば十分。
この記事では、コーヒーにまつわる道具の名前と役割を、できるだけ幅広くご紹介していきます。 ハンドドリップの道具だけでなく、フレンチプレスやモカポット、私たちがおすすめしている急須での淹れ方まで。
「ああ、あれってそういう名前だったんだ」 そんなふうに、ちょっとすっきりしてもらえたらうれしいです。
コーヒーの道具は、ざっくり3つに分けられる
たくさんあるように見えるコーヒーの道具ですが、役割で分けると意外とシンプルです。
「豆を挽く道具」「コーヒーを淹れる道具」「あると便利な道具」。
この3つ。 淹れる道具のバリエーションが多いので複雑に見えますが、根っこはこれだけです。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
豆を挽く道具:ミル(グラインダー)

コーヒー豆を粉にするための道具を「ミル」と呼びます。 英語では「グラインダー」とも。日本では「ミル」のほうが馴染みがあるかもしれません。
手でハンドルをくるくる回す「手挽きミル」と、ボタンひとつで挽ける「電動ミル」の2種類があります。
FUKUSUKE COFFEEのお客様のなかにも、「最初は手挽きから始めました」という方が多いです。 ゴリゴリと豆を挽く感触、挽いた瞬間にふわっと広がる香り。 あの時間が好きで手挽きを選んでいる、という声もよく聞きます。
ちなみに、豆を挽く細かさのことを「挽き目(ひきめ)」と言います。 細かく挽くほど成分が出やすくなり、粗く挽くと成分が出にくくなります。 どの淹れ方を選ぶかによって、適した挽き目が変わってきます。
「うちは粉で買っているから、ミルは持っていない」という方も、もちろん大丈夫。 粉の状態でも、十分おいしいコーヒーは淹れられます。
コーヒーを淹れる道具たち
ここからが、コーヒー道具の世界がぐっと広がるところです。
コーヒーの淹れ方にはいろいろな種類がありますが、実は仕組みで分けると大きく3つ。
「お湯を通して淹れる(透過式)」
「お湯に浸して淹れる(浸漬式)」
「圧力をかけて淹れる」
この3つの仕組みを頭に入れておくと、どんな道具が出てきても「ああ、あのタイプね」とすっと理解できるようになります。
お湯を通して淹れる道具(透過式)

コーヒーの粉にお湯を注いで、重力で下に落としながら抽出する方法です。 「透過式」と呼ばれますが、名前を覚えなくても大丈夫。 「お湯が粉を通り抜けていく淹れ方」と思っていただければ十分です。
ペーパーフィルターや布を通すので、すっきりとクリアな味わいに仕上がりやすいのが特徴です。
ドリッパーとペーパーフィルター(ハンドドリップ)

日本でいちばん親しまれている淹れ方が、ハンドドリップ。 その主役が「ドリッパー」と「ペーパーフィルター」です。
ドリッパーは、円錐形や台形のかたちをした器具。 ここにペーパーフィルターとコーヒーの粉をセットして、上からお湯を注ぎます。 粉を通ったお湯がコーヒーの成分を引き出しながら、下にぽたぽたと落ちていく。
ペーパーフィルターは、コーヒーの粉がカップに落ちないように濾してくれる紙のフィルターです。 使い捨てなのでお手入れが簡単なのも、初めての方にはうれしいところ。
ドリッパーの素材はプラスチック、陶器、ガラス、金属などさまざま。 FUKUSUKE COFFEEでは円錐形のドリッパーを使っていますが、どれが正解ということはありません。
ひとつ気をつけたいのは、ドリッパーのかたちに合ったフィルターを選ぶこと。 円錐形のドリッパーには円錐形のフィルター、台形には台形のフィルター。 同じメーカーで揃えておくと、まず間違いないです。
ネルフィルター(ネルドリップ)

ペーパーフィルターの代わりに、布製のフィルターを使って淹れる方法。 この布のことを「ネル」と呼びます。正式にはフランネルの略です。
仕組みはハンドドリップと同じ透過式。 でも、ネルは布目がペーパーより粗いので、コーヒーのオイルが適度に通り抜けます。 そのぶん、なめらかでとろりとした舌触りの一杯に。 「究極のドリップ」と呼ぶ人もいるほど、根強いファンがいます。
ただ、使ったあとは煮沸して水に浸けて冷蔵庫で保管する、というお手入れが必要。 毎日の水替えも欠かせません。 手間を楽しめる方にとっては、最高の道具です。
コーヒーメーカー(ドリップ式)

水とコーヒーの粉をセットしてスイッチを押すだけで、自動でコーヒーを淹れてくれる電気式の機械。 仕組みとしてはハンドドリップと同じ透過式を、機械が自動でやってくれるイメージです。
忙しい朝に、手を動かさなくてもコーヒーができあがるのが最大の魅力。 タイマーつきのものなら、前の晩にセットしておけば起きたときにはもうコーヒーの香りが漂っている、なんてことも。
味のコントロールは機械任せになりますが、安定した一杯を手軽に楽しみたい方にはぴったりの道具です。
ドリップポット(ドリップケトル)

透過式でお湯を注ぐときに使う、注ぎ口が細いポット。 「ドリップポット」や「ドリップケトル」と呼ばれています。
普通のやかんと何が違うのかというと、注ぎ口が細くて長い。 お湯をゆっくり、少しずつ注ぐことで、コーヒーの味わいが安定します。 やかんだとドバっと出てしまって、粉が暴れてしまうんですよね。
お店では温度計つきのケトルを使っていますが、最初は注ぎ口が細ければ十分です。
サーバー(コーヒーサーバー)

ドリッパーの下にセットして、抽出されたコーヒーを受け止めるガラスの容器。 目盛りがついているものが多く、できあがりの量がひと目で分かります。
1杯分ならカップに直接落としても大丈夫ですが、2杯以上淹れるときはサーバーがあると便利。 コーヒーはドリッパーの上のほうが薄く、下のほうが濃くなる性質があるので、サーバーに落としてからスプーンでくるっと混ぜると、味が整います。
お湯に浸して淹れる道具(浸漬式)
コーヒーの粉をお湯にしばらく浸けておいて、時間が来たら粉と液体を分ける方法。 「浸漬式(しんししき)」と呼ばれます。
透過式のように「お湯の注ぎ方」で味が変わることがないので、誰が淹れても味がブレにくいのが大きな特徴。 粉の量とお湯の量、浸ける時間さえ決めてしまえば、あとは待つだけです。
ペーパーフィルターを通さないものが多いので、コーヒーの油分(オイル)がそのまま残り、まったりとした口当たりになりやすい。 豆そのものの個性がダイレクトに感じられる淹れ方です。
フレンチプレス(コーヒープレス)

ガラスの筒に粉とお湯を入れて、数分間待ってから金属のフィルターをぐっと押し下げる。 それが「フレンチプレス」です。「コーヒープレス」とも呼ばれます。
浸漬式の代表選手。 お湯を注ぐ技術も、特別なコツもいりません。 粉とお湯を入れて、待って、押す。それだけ。
FUKUSUKE COFFEEでは、コーヒーのテイスティング(味の評価)をするとき、フレンチプレスに近い方法で淹れています。 豆本来の味わいがいちばんストレートに出るからです。
急須・ティーポット

ここで、少し意外に思われるかもしれないものをご紹介します。
おうちにある急須やティーポットでも、おいしいコーヒーが淹れられるんです。
粉を入れて、お湯を注いで、4分ほど待つ。 お茶を淹れるのとほとんど同じ要領です。
仕組みとしてはフレンチプレスと同じ浸漬式。 だから味わいの方向性も似ていて、コーヒー本来の味をしっかり感じられる一杯になります。 しかも、プロがテイスティングするときの方法ともほぼ同じ。 豆の飲み比べをしたいときにもぴったりの淹れ方です。
FUKUSUKE COFFEEでは、この急須を使った淹れ方をおすすめしています。
特別な道具を買い足さなくていい。 台所にある急須で始められる。 コーヒーを淹れることへのハードルが、ぐっと下がる方法だと思っています。
サイフォン

理科の実験器具のような、ガラスのフラスコが上下に重なった見た目。 アルコールランプやハロゲンヒーターで下のフラスコを加熱すると、蒸気の力でお湯が上のフラスコに押し上げられ、そこでコーヒーの粉と混ざる。 火を消すと、抽出されたコーヒーが下のフラスコに戻ってくるという仕組みです。
上のフラスコでお湯と粉が混ざっている間は浸漬式と同じ原理で抽出が進みます。 昔ながらの喫茶店で見たことがある、という方もいるかもしれませんね。
淹れている過程そのものが美しくて、見ているだけでわくわくする道具。 ただ、パーツが多くお手入れに少し手間がかかるので、「いつか挑戦してみたい」くらいの気持ちで知っておいていただければ十分です。
圧力をかけて淹れる道具
お湯に圧力を加えることで、短い時間でぎゅっと濃いコーヒーを抽出する方法です。 透過式や浸漬式に比べると、出来上がるコーヒーは濃厚で力強い味わいになります。
エスプレッソマシン

高い圧力をかけて、短時間で濃厚なコーヒーを抽出する機械。 カフェのカウンターに置いてある、あの大きな機械です。
エスプレッソは、圧力式の王道。 少量のお湯を高圧で粉に通すことで、クレマと呼ばれるきめ細かい泡をまとった、とろりと濃い一杯が生まれます。
家庭用のコンパクトなモデルもありますが、豆の挽き具合や圧力の調整など、奥が深い世界。 ラテアートを楽しみたい方や、エスプレッソそのものの味わいを追求したい方が手を伸ばす道具です。
お値段もそれなりにするので、「いつかは」と夢見ている方も多いのではないでしょうか。
モカポット(マキネッタ)

イタリアの家庭では定番中の定番。 直火にかけて、蒸気の圧力でコーヒーを抽出する小さな金属製のポットです。
「マキネッタ」というイタリア語の呼び方のほうが馴染みがある方もいるかもしれません。 八角形のアルミ製のものが有名で、イタリア映画やドラマで見たことがある方もいるのではないでしょうか。
エスプレッソマシンほどの高圧はかかりませんが、ハンドドリップよりもぐっと濃くて力強い味わい。 ミルクを入れてカフェラテ風に楽しむのにもよく合います。
火加減だけ気をつければ淹れ方は難しくなく、何より佇まいがかわいらしい道具です。
エアロプレス

注射器のような見た目のユニークな道具。 筒にコーヒーの粉とお湯を入れて、手で押し込むことで空気の圧力をかけて抽出します。
2005年にアメリカのおもちゃメーカーが発明したもので、コーヒー器具のなかではかなり新しい存在。 軽くてコンパクトなので、キャンプや旅行に持っていく人も多いです。
面白いのは、レシピ次第でエスプレッソ風にもドリップ風にもなるところ。 浸漬の時間や押す力加減で、味わいがどんどん変わる。 そんな自由度の高さから、世界大会が開かれるほど愛好家の多い道具です。
あると便利な道具たち
ここからは、どの淹れ方でも共通して「あるとちょっといい」道具をご紹介します。
スケール(はかり)

コーヒーの粉やお湯の量をはかるための道具。 キッチンにあるデジタルスケールで十分ですが、コーヒー専用のものにはタイマー機能がついているものもあります。
FUKUSUKE COFFEEのレシピでは、粉10gに対してお湯150gを基本にしています。 このバランスを毎回同じにするだけで、味のブレがぐっと減るんですよね。
「なんとなく」で淹れていたのを、ちょっと量ってみるだけ。 それだけで、毎朝のコーヒーが見違えることがあります。
タイマー

コーヒー専用のスケールにタイマーが内蔵されているものもありますが、キッチンスケールなどを使用する場合は別途タイマーで時間を計測すると、さらに味わいが安定します。
もちろん、キッチンタイマーがなければスマホのタイマーでも大丈夫ですよ。
温度計

お湯の温度を確認するためのもの。 キッチン用の温度計でも、温度表示つきのケトルでも大丈夫です。
FUKUSUKE COFFEEのハンドドリップレシピでは、85℃を目安にしています。 温度を少し変えるだけで、同じ豆でも味の印象がかなり変わる。 この変化に気づくと、コーヒーがもっと面白くなります。
全部揃えなくていい、から始まるコーヒーの時間

ここまでいろいろな道具をご紹介してきましたが、大切なことをひとつ。
全部揃える必要は、ありません。
むしろ、自分の暮らしに合うものをひとつだけ選ぶほうが、ずっと自然にコーヒーが日常に溶け込んでいきます。
お湯の注ぎ方にこだわりたいなら、透過式のハンドドリップを。 誰でも同じ味に淹れたいなら、浸漬式のフレンチプレスを。 特別な道具を買い足したくないなら、同じく浸漬式の急須を。
お店でお客様とお話ししていると、「道具を一式揃えないと始められない」と無意識に思ってらっしゃる方と出会うことがあります。 そんなことはないんです。 急須とコーヒーの粉があれば、今日からもう始められます。
道具は、コーヒーを楽しんでいくなかで、少しずつ増えていくもの。
「もうちょっとお湯を細く注ぎたいな」と思ったらドリップポットを。 「毎回同じ味に淹れたいな」と思ったらスケールを。 「ちょっと変わった淹れ方を試してみたいな」と思ったらエアロプレスを。
そんなふうに、自分のペースで。
FUKUSUKE COFFEEでは、道具のご相談もお受けしています。 「何から始めたらいい?」「これってどう使うの?」 そんなことを気軽に聞いていただける場所でありたいと思っています。
あなたのコーヒーの時間が、ゆっくりと、やさしく広がっていきますように。
あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
・このコーヒー、どう選べばいい?
・プレゼントで失敗しないコツを知りたい
・浅煎りって、正直よくわからない
・こんな話、読んでみたい
・最近こんなことで悩んでいます
などなど、どんな小さなことでも大丈夫です。
ふと感じた疑問や、知りたいこと、悩んでいることを、そっと教えてください。
いただいたお声は、次の読みものや商品づくりのヒントとして、ひとつひとつ、大切に活かしていきます。

FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー

