「コーヒーには、どのくらいカフェインが入っているのだろう。」
ふと、そんなことが気になる瞬間はありませんか。
夜に1杯飲んで、なかなか眠れなかった日のあと。あるいは、健康診断でお医者さんからひと言いわれたとき。
今日はコーヒーのカフェイン量について、できるだけ具体的な数字と一緒にお話ししていきます。
「なんとなく多そう」から「これくらい入っているんだ」へ。イメージが少しクリアになると、毎日のコーヒー時間がもう少し心地よくなるかもしれません。
まずは基本の数字から
食品安全委員会や日本食品標準成分表によると、一般的なドリップコーヒーに含まれるカフェインは、100mlあたりおよそ60mgとされています。
コーヒーカップ1杯を120mlとすると、1杯あたりはおよそ70mg前後。マグカップ1杯を200mlとすれば、およそ120mgという計算になります。
この「100mlで60mg」という数字を、頭の片隅にそっと置いておくだけで、1日のカフェイン量がだいぶ見えやすくなりますよね。
朝と午後に1杯ずつマグカップで飲んだ日は、合わせて240mgくらい。これが基本の目安です。
ほかの飲み物と比べてみると

「コーヒーはカフェインが多いもの」というイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか。実際にお茶と並べてみると、こんな感じです。
煎茶は100mlあたり約20mg。ほうじ茶も同じくらいで20mg。紅茶は約30mg。こうして見ると、ドリップコーヒーの60mgはたしかに少し多めですよね。
ところが、緑茶のなかに1つだけ例外があります。
玉露は100mlあたりおよそ160mgで、コーヒーの倍以上のカフェインを含んでいるんです。

覆いをかけて日光を遮って育てる製法の影響で、葉のなかにカフェインがぎゅっと蓄えられるためといわれています。「お茶はコーヒーよりやさしい」というイメージも、玉露だけはちょっと別の話になりそうです。
カフェイン量を左右する3つの要素
じつは、コーヒーのカフェイン量はいつも同じではありません。「豆の品種」「焙煎度」「抽出方法」。この3つによって、1杯に入るカフェインはずいぶん変わってきます。
豆の品種|アラビカとロブスタの違い

コーヒーの豆には、大きく分けてアラビカ種とロブスタ種があります。
スペシャルティコーヒーのほとんどはアラビカ種で、香りや酸味の繊細さが特徴です。一方のロブスタ種は、苦味とコクが強く、インスタントコーヒーや缶コーヒー、エスプレッソのブレンドに使われることの多い品種です。
この2つは、カフェイン量にも大きな違いがあります。ロブスタ種のカフェイン量は、アラビカ種のおよそ2倍。同じ1杯のコーヒーでも、どの品種を使っているかで、体に入るカフェインは倍ちがうこともあるんです。
焙煎度|深煎りのほうが少ない、は本当?

「深煎りのほうがカフェインが少ない」という話を、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。これは半分本当で、半分は誤解、というちょっとややこしい話です。
焙煎が進むと、豆は水分を失って軽くなり、ひとまわり大きくふくらみます。そのため、同じ1杯を「スプーン何杯」で計ると、深煎りの豆は数が多くなりがち。
結果として、スプーン計量の場合は浅煎りのほうがカフェインが多くなる、という現象が起こります。
では、きちんと「重さ」で計った場合はどうでしょうか。浅煎りと深煎りで、カフェイン量の差はごくわずかです。焙煎の過程でカフェインが壊れる量は、思ったほど多くありません。
「浅煎りのほうが目が覚める気がする」「深煎りはまろやかだから眠気に効きにくい」そういった印象は、カフェインの量というよりも、酸味や香りがもたらす刺激の違いなのかもしれません。
抽出方法|同じ豆でも淹れ方で変わる

同じ豆を使っても、淹れ方によってカフェインの出方は変わってきます。
ただ、この話は少しややこしくて、「この淹れ方がいちばん多い」「この淹れ方がいちばん少ない」と単純に言いきれるものではありません。
まず、比較的はっきりしているところから。
ハンドドリップやペーパードリップは、お湯が粉を通り抜けながら成分を引き出していく淹れ方で、100mlあたり60mg前後が目安になります。いちばんなじみのある「60mg」はこの方法の数字です。
エスプレッソは、少量のお湯を高い圧力で一気に通すので、濃度だけ見ればドリップよりかなり高め。

ただし1ショットは30mlほどしかないため、カフェインの総量は1杯でおよそ60〜80mgと、マグカップのドリップコーヒーよりむしろ軽めになります。
「エスプレッソ=カフェインが強烈」というイメージとは、ちょっと違うかもしれません。
一方で、フレンチプレスや水出しコーヒーについては、「こちらのほうが多い/少ない」と断言しにくいところがあります。

フレンチプレスは浸漬時間が長いぶんカフェインが出やすそうに思えますが、研究によっては「ドリップよりやや多い」とする結果もあれば、「ほぼ同じ」「むしろ少し少ない」とする結果もあります。
水出しコーヒーも、濃縮で作って薄めるのか、そのまま飲むのかで、1杯のカフェイン量はずいぶん変わってきます。
つまり、抽出方法の違いよりも「どのくらいの量の粉を使い、どのくらいの時間お湯と触れさせたか」のほうが、カフェイン量には効いてくるということだと解釈しています。
お湯の温度、抽出時間、粉の量。このどれを動かしても1杯のカフェイン量は変わりますし、「正解の数字」があるわけでもありません。そのときの気分や体調に合わせて調整できる余地がある、と受け取っていただけたらと思います。
1日にどのくらいまで飲んでも大丈夫?

「じゃあ、1日何杯までなら平気なの?」というのは、多くの方が気にされるところだと思います。
健康な成人の1日のカフェイン摂取量の目安として、カナダ保健省、欧州食品安全機関(EFSA)、アメリカのFDAなどが共通して示しているのは400mgまでという数字です。ドリップコーヒーに換算すると、マグカップでおよそ3杯ほど。思ったより飲めるな、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ただし、妊娠中や授乳中の方は1日200〜300mgまでが目安とされていて、一度にたくさん摂るよりも、少量ずつ分けて飲むほうが安心だといわれています。
そしてなにより、カフェインへの感受性は人によってかなり違います。同じ1杯でも、夜までぐっすり眠れる方もいれば、午後の1杯で目が冴えてしまう方もいます。
じつは、代表の三浦もあまりカフェインが強いほうではありません。
一日に何十種類もの豆を確かめるカッピングの日は、口に含んで風味を見たあとはきちんと吐き出して、カフェインを摂りすぎないように調整しています。プロの現場では、これが当たり前の作法だったりします。
ところが問題は、仕事を離れたときなんです。
お休みの日にふらりとコーヒー巡りに出かけると、気になるお店がいくつもあって、気づけば3軒、4軒とはしごしていたり。
お店に戻ればスタッフの抽出練習に付き合って、「今のちょっと飲ませて」「これはどう?」なんてやっているうちに、楽しくなってどんどん杯が進んでしまう。そして夕方にはすっかり手が震えてへろへろ。「今日もやってしまった」と言いながら家に帰る日が、正直けっこうあります。

焙煎士という肩書きからすると意外に思われるかもしれませんが、好きなことと、体が強いことは別の話です。だからこそ、お客様に「ご自分のペースで楽しんでくださいね」とお伝えするときの気持ちは、ちょっと実感がこもっているのかもしれません。
「最近、寝つきが悪いな」「午後からそわそわするな」と感じたら、量やタイミングを少し見直してみる。それがいちばんやさしい付き合い方だと思っています。
数字を知ると、コーヒーとの距離が少し近くなる

カフェインの量を知ることは、コーヒーを制限するためというより、「安心して楽しむための目安」を手に入れることだと、私たちは思っています。
今日の1杯にはどのくらいカフェインが入っているだろう。その感覚がうっすらあるだけで、朝のコーヒーも、夜のひと息も、自分の体調とちょうどいい距離で付き合えるようになっていきます。
「今日は午後からデカフェに切り替えよう。」「明日は大事な会議だから、朝はしっかり深煎りを1杯。」そんなふうに、数字を味方にしながらコーヒー時間を組み立てていく。それも、ひとつの楽しみ方なのだと思います。
カフェインについて気になることがあれば、お店でもお気軽に聞いてくださいね。一杯のコーヒーが、あなたの毎日にそっと寄り添う時間になりますように。
参考
- 内閣府 食品安全委員会「食品中のカフェイン」ファクトシート
- 文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」
- 欧州食品安全機関(EFSA)、カナダ保健省(Health Canada)、米国食品医薬品局(FDA)の成人カフェイン摂取基準
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