Fukusuke Coffee

コーヒーを粉から淹れるって、どういうこと?

先日、お店でこんなご質問をいただきました。

「コーヒーを粉から淹れるって、どういうことですか?」

カフェのつもりで、ふらりと立ち寄ってくださった方でした。

正直にお話しすると、聞かれた瞬間、少しだけ言葉に詰まったんです。

私たちが毎日あまりにも当たり前に使っていた言葉だったので、どこから説明すればいいのか一瞬わからなくなってしまって。

でも、あとから考えるほど、もっともなご質問だなと思いました。

コーヒーが好きでも、家で淹れたことがなければ、「コーヒーの粉とは?」を知る機会はほとんどありませんよね。

今日はその、いちばん最初のところをお話しさせてください。


コーヒーの粉は、お湯に溶けません

まず、ここがいちばん大事なところです。

コーヒーの粉は、お湯を注いでも溶けないんです。

「え、インスタントは溶けるのに?」と思われたかもしれません。

インスタントコーヒーは、一度淹れた(お湯を通して成分を抽出した)コーヒーを乾かして粉の姿にしたもの

つまり、すでに完成した飲みものが、形を変えてまた粉のふりをしているだけなんですね。

一方で、焙煎したコーヒー豆を挽いた粉は、これとはまったく別のものです。

カップに入れてお湯を注いでも、底に沈んだまま。かき混ぜても、ざらざらと舌に残ってしまいます。

粉のうち、お湯に溶け出してくれる成分は2割ほど。

残りの8割は、最後まで溶けずにそこにいるんです。


実は、緑茶や紅茶とまったく同じことをしています

ここまで読んで、何かに似ているなと感じられませんでしたか。

そう、お茶です。

急須に茶葉を入れて、お湯を注いで、湯呑みに移す。

あのとき、茶葉そのものを飲む方はいませんよね。

味と香りだけがお湯のほうに移って、葉っぱは急須に残ります。

コーヒーもまったく同じことをしています。

粉にお湯を通して、溶け出してきた味と香りだけを受け取る。役目を終えた粉は、フィルターの中に残ります。

つまりコーヒーの粉は、飲みものではなく、味を取り出すための材料なんです。

ここさえつかんでいただければ、あとの話はぜんぶ枝葉のようなものだと思っています。


だから「淹れる」という言葉を使うんです

「作る」でも「混ぜる」でもなく、「淹れる」

お茶とコーヒーで同じ言葉が使われているのは、やっていることが同じだからなんですよね。

専門的には「抽出」と呼びます。

材料から、欲しい成分だけを取り出すこと。かつお節からだしを引くのも、考え方としては仲間です。

言葉にすると難しく聞こえるかもしれませんが、していることはとてもシンプルなんです。


カフェのカウンターでも、していることは同じです

お店でコーヒーを注文したとき、カウンターの向こうで何が起きているか。

粉にお湯を通しているだけ、と言ってしまえばそれだけなんです。

もちろん、豆の選び方や焙煎、お湯の温度や注ぎ方で味は驚くほど変わります。私たちも、そこにはたくさんの知識や技術、時間をかけています。

でも、根っこの仕組みは、お店でも家庭でもまったく変わりません。

「あの一杯を、家でも飲めたらいいのにな」

そう思ったとき、実はもう半分くらいは分かっているようなものなんですよ。


やってみると、思っているより短い時間で終わります

流れだけ、ざっとお伝えしますね。

ドリッパーにペーパーフィルターをセットして、コーヒーの粉を入れる。

お湯を少しだけ注いで、20秒ほど待つ。

残りのお湯をゆっくり注いで、落ちきったら完成です。

私たちが家庭用としておすすめしている分量は、粉10gに対してお湯150g

お湯の温度は85度くらいが、いちばん失敗しにくいと感じています。

お湯を沸かす時間を入れても、5分あれば一杯できあがります。

淹れ方をもう少し詳しく知りたくなったら、こちらでお話ししていますので、のぞいてみてくださいね。


「粉で買う」のは、手抜きではありません

コーヒーには、豆のまま買って自分で挽く楽しみもあります。挽いている最中の香りは、それだけで幸せなものです。

ただ、粉で買うことが簡易版というわけではないんです。

お店には業務用のグラインダーがあって、家庭用のグラインダーよりも粒の大きさがきれいに揃います。

粒が揃うと雑味が出にくくなるので、味の面で損をすることはほとんどありません。

お店で買うときは「ペーパードリップ用に挽いてください」など、使い方と一緒にお伝えいただければ大丈夫。

ひとつだけ、粉は豆のままより少し早く風味が落ち着いてきます。

2週間から1ヶ月くらいで飲みきれる量を選んでみてください。


おわりに

あの日いただいたご質問は、私たちにとってもありがたいものでした。

知っていて当たり前、という顔をしていたら、そのままこぼれ落ちてしまう疑問だったので。

コーヒーは、粉にお湯を通して、味だけを受け取る飲みもの。

分かってしまえば、たったそれだけのことなんです。

お店では、「粉でください」のひとことで大丈夫。

挽き方も、飲みきる目安も、そのときに一緒にお話しさせてください。

はじめての一杯が、あなたの日常にそっと福を届けてくれますように。


あなたのことも、教えてください

FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。

・このコーヒー、どう選べばいい?
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