Fukusuke Coffee

コーヒー豆の種類|アラビカ、ロブスタ、そしてその先へ

コーヒー豆を買おうとしたとき、「アラビカ100%」という表示を見たことはありませんか。

なんとなく良さそうな響きだけれど、アラビカって何だろう。ロブスタという名前も聞いたことがある気がする。

ティピカ、ブルボン、ゲイシャ……コーヒー専門店のメニューに並ぶ品種の名前たち。

「いったい、コーヒー豆にはどのくらいの種類があるの?」

そんな疑問を抱いたことがある方へ。今日は、コーヒー豆の世界を「種」と「品種」という二つの視点から、やさしくご案内していきます。

全体像が見えると、コーヒー選びがぐっと楽しくなるはずです。


まずは大きな分類から。コーヒーの「種」を知る

コーヒーの木は、アカネ科コーヒーノキ属に分類される植物です。

実はこの属には120種以上もの種が存在するのですが、私たちが日常的に飲んでいるコーヒーは、主に2つの種から作られています。

アラビカ種(Coffea arabica)

世界のコーヒー生産量のおよそ60〜70%を占める、最も広く栽培されている種です。

エチオピアの高地が原産とされ、標高1,000〜2,000メートルほどの涼しい高地で育ちます。

繊細な香りと、果実のような酸味、複雑な風味を持つことから、スペシャルティコーヒーの多くはこのアラビカ種から生まれています。

興味深いことに、アラビカ種は他のコーヒーの種とは異なる遺伝的特徴を持っています。

染色体の数が44本あり、これは他のコーヒー種(22本)の2倍。

2024年にNature Genetics誌に発表された研究によると、アラビカ種は35万〜61万年前に、カネフォラ種(ロブスタの元となる種)とユーゲニオイデス種という2つの野生種が自然交配して誕生したことがわかっています。

この特別な遺伝子構造が、アラビカ種ならではの複雑で繊細な風味を生み出しているのです。

カフェイン含有量は比較的控えめで、およそ0.8〜1.5%(多くは1.2%程度)。苦味が穏やかで、豊かな香りを楽しめるのが特徴です。

カネフォラ種(Coffea canephora)— ロブスタ

世界のコーヒー生産量の30〜40%を占める、第二の主要種です。

「ロブスタ」という名前のほうが馴染み深いかもしれません。

「ロブスタ(Robusta)」という名前は、ラテン語で「力強い」「頑丈な」を意味する言葉に由来します。

その名の通り、病害虫への耐性が高く、低地でも栽培でき、収穫量も多い、たくましいコーヒーです。

カフェイン含有量はアラビカ種の約2倍で、1.7〜4%(平均2.2%程度)。

このカフェインは、実は植物にとっての天然の防虫成分として機能しています。

味わいは、力強い苦味と濃厚なボディが特徴。

インスタントコーヒーや、濃厚なエスプレッソブレンドによく使われています。

イタリアンスタイルのエスプレッソに欠かせないクレマ(泡)を豊かにする効果もあり、エスプレッソ文化が根付いた地域では今も重要な役割を担っています。

主な生産地はベトナム、ブラジル、インドネシアなど。

特にベトナムは世界最大のロブスタ生産国です。

リベリカ種(Coffea liberica)

西アフリカ・リベリア原産の種で、世界の生産量の1〜2%程度を占めます。

フィリピンやマレーシアで栽培されており、独特のスモーキーな風味とフルーティーな香りを持ちます。

日本ではあまり見かける機会がありませんが、東南アジアでは一定の人気があります。


「種」と「品種」の違いを整理する

ここで少し立ち止まって、言葉の整理をしておきましょう。

お米に例えると、わかりやすいかもしれません。「イネ」という植物があり、その中に「コシヒカリ」「あきたこまち」「ササニシキ」といった品種がありますね。コーヒーも同じです。

「アラビカ種」「ロブスタ種」は、植物分類学でいう「種(Species)」にあたります。

そして、アラビカ種の中にある「ティピカ」「ブルボン」「ゲイシャ」などは「品種(Variety)」です。

つまり、アラビカ種という大きなグループの中に、何十、何百もの品種が存在しているのです。

コーヒー専門店で目にする品種名の多くは、このアラビカ種に属する品種たち。

それぞれが異なる風味特性を持ち、産地の環境(テロワール)と合わさって、個性豊かな一杯を生み出しています。


アラビカ種の代表的な品種たち

アラビカ種の中でも、特によく知られている品種をご紹介します。

これらを知っておくと、コーヒー選びの幅がぐっと広がります。

ティピカ(Typica)

アラビカ種の「原型」とも呼べる品種です。

エチオピアからイエメンへ、そしてオランダ人によってジャワ島へ、さらにカリブ海や中南米へ。

15世紀頃から始まったコーヒー栽培の歴史の中で、世界中に広がっていった最初の品種がティピカです。

すっきりとした酸味と、クリーンな後味が特徴。

華やかさよりも、上品で穏やかな風味を持ちます。

ただし病害虫に弱く収穫量も少ないため、現在では栽培が減少傾向にあります。

それでも、ジャマイカのブルーマウンテンやハワイのコナなど、高品質コーヒーの銘柄に今も使われている大切な品種なんです。

ブルボン(Bourbon)

ティピカから自然変異で生まれた品種で、インド洋に浮かぶレユニオン島(旧名:ブルボン島)で発見されたことからこの名がつきました。

ティピカに比べて収穫量がやや多く、丸みを帯びた甘さと、バランスの良い酸味が特徴です。

中南米やアフリカのルワンダ、ブルンジなどで広く栽培されています。

ブルボンは、その後の品種改良の「親」としても重要な役割を果たしており、多くの現代品種がブルボンの血を引いているんです。

カトゥーラ(Caturra)

1930年代にブラジルで発見された、ブルボンの自然突然変異種です。

樹高が低く、密植栽培ができるため生産効率が良いのが特徴。

ティピカやブルボンからの植え替えでカトゥーラが選ばれることも多く、中南米で広く栽培されています。

明るい酸味と軽やかなボディを持ち、すっきりとした味わいです。

カトゥアイ(Catuai)

カトゥーラとムンドノーボ(ブルボンとティピカの自然交配種)を人工交配して生まれた品種です。

カトゥーラの生産効率の良さと、ムンドノーボの環境適応力を兼ね備えています。

中南米、特にブラジルやコスタリカで主力品種として栽培されています。

SL28 / SL34

ケニアで1930〜40年代に開発された品種で、「SL」は「Scott Laboratories」(当時の研究機関)の略です。

ケニアコーヒー特有の、鮮やかな果実味と複雑な酸味を生み出す品種として知られています。

ブラックカラントやトマトのような独特の風味表現で語られることも多く、スペシャルティコーヒーの世界では高い評価を受けています。

パカマラ(Pacamara)

エルサルバドルで生まれた品種で、パカス種とマラゴジペ種を交配して作られました。

コーヒー豆としては非常に大粒で、複雑な風味プロファイルを持ちます。

フローラルな香り、果実味、しっかりとしたボディが特徴。

中米のスペシャルティコーヒーコンペティションで上位に入ることも多い品種です。


話題の品種、ゲイシャ(Gesha)のこと

近年、スペシャルティコーヒーの世界で最も注目を集めている品種といえば、ゲイシャでしょう。

オークションで1ポンド(約450g)あたり数百ドル、時には1,000ドルを超える価格がつくこともあるこの品種。

その特別な魅力と歴史についてお話しします。

名前の由来は「芸者」ではありません

「ゲイシャ」という響きから日本の芸者を連想する方も多いのですが、実はエチオピア南西部にある「ゲシャ(Gesha)」という地域の名前に由来しています。

1930年代、イギリスの研究者がエチオピアのゲシャ地域で野生のコーヒーの木を発見し、種子を採取しました。

その記録に「Geisha」と綴られたことから、この名前が広まったとされています。現地の言語カファ語は当時文字を持たなかったため、英語表記の際に「Geisha」となったのです。

現在では、エチオピア産のものは「Gesha」、中南米産のものは「Geisha」と表記されることが多いですが、遺伝的にはエチオピア系統に非常に近いことが研究でわかっています。

パナマでの「再発見」

ゲイシャが世界的な注目を集めるきっかけとなったのは、2004年のパナマでの出来事でした。

1960年代にコスタリカ経由でパナマに持ち込まれていたこの品種は、当初は注目されていませんでした。

収穫量が少なく、栽培に手間がかかるためです。

しかし2004年、パナマのエスメラルダ農園が「ベスト・オブ・パナマ」というコーヒー品評会にゲイシャを出品。

その圧倒的な風味が審査員を驚かせ、過去最高額で落札されました。

それ以来、ゲイシャは世界中のコーヒー関係者を魅了し続けています。

ゲイシャの風味

ゲイシャの最大の特徴は、その華やかな香りと繊細な風味です。

ジャスミンのようなフローラルな香り、ベルガモットや柑橘系の明るい酸味、桃や熱帯果実を思わせる甘み。紅茶のようにすっきりとした口当たりでありながら、複雑で重層的なフレーバーが広がります。

他のコーヒー品種では再現できないこの個性が、ゲイシャを特別な存在にしています。

現在はパナマだけでなく、コロンビア、コスタリカ、エチオピアなど各地で栽培されており、産地によって少しずつ異なる個性を見せています。


品種を知ると、コーヒー選びが変わる

ここまで読んでくださった方は、コーヒー豆の世界の「地図」が少し見えてきたのではないでしょうか。

まとめると、こういう構造になっています。

コーヒーノキ属(120種以上)
├── アラビカ種(60〜70%)─── ティピカ、ブルボン、ゲイシャ、カトゥーラ…
├── カネフォラ種/ロブスタ(30〜40%)
└── リベリカ種(1〜2%)

スペシャルティコーヒーショップで出会うコーヒーの多くは、アラビカ種の様々な品種です。

品種を知ることの意味

「品種なんて覚えなくても、美味しければいいのでは?」

もちろん、その通りです。

難しいことを考えずに、直感で「美味しい」と感じる一杯を選ぶのも素敵なコーヒーの楽しみ方だと思います。

ただ、品種を少し知っておくと、こんな良いことがあります。

それは「自分の好みを言葉にしやすくなる。」ということ。

「ゲイシャの華やかさが好き」「ブルボンのバランスの良さが落ち着く」など、好みを伝えやすくなります。

また、新しい味との出会いが広がります。

「エチオピアのティピカ系が好きだから、ケニアのSL28も試してみよう」といった具合に、新しいコーヒーを選ぶときの指針になります。

コーヒーの背景が見えてくる。

その一杯が、どんな植物から、どんな歴史を経て、カップに届いているのか。

そんな物語が見えてくると、コーヒー時間がより豊かになります。


FUKUSUKE COFFEEとコーヒー品種

私たちFUKUSUKE COFFEEでは、季節ごとに様々な産地・品種のコーヒー豆をご紹介しています。

品種の特性を最大限に引き出すために、一つひとつの豆と向き合い、焙煎度合いを調整しています。

ブルボン系の豆なら、その丸みのある甘さを活かす焙煎を。

ゲイシャなら、繊細なフローラル感を損なわないよう、気をつけつつも生焼けにならないように中までしっかり火を通します。

難しく考える必要はありません。

商品ページに記載されている品種名を見て、「これ、記事で読んだやつだ」と思い出していただければ嬉しいです。

そして、その知識が、あなたの「次の一杯」を選ぶときの小さな手がかりになれば、これほど嬉しいことはありません。


おわりに

コーヒー豆の種類について、駆け足でご案内してきました。

アラビカとロブスタという大きな分類から、ティピカ、ブルボン、ゲイシャといった品種の世界へ。

コーヒーの世界は、知れば知るほど奥深く、広がっていきます。

でも、大切なのは「全部覚えなきゃ」と気負うことではありません。

「今日はブルボンのコーヒーにしてみようかな」
「ゲイシャって、こういう歴史があったんだ」

そんなふうに、コーヒーを選ぶときの楽しみが一つ増えれば、それで十分です。

一杯のコーヒーには、長い年月をかけて受け継がれてきた植物の歴史と、それを育てる人々の想いが詰まっています。

品種を知ることは、そんなコーヒーの物語への入り口なのかもしれません。

次にコーヒー豆を選ぶとき、ぜひ品種名にも目を向けてみてください。きっと、新しい発見があるはずです。


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