「コーヒーって、もともと果実なんですよ」
お店でこんなふうにお話しすると、驚かれるお客様が少なくありません。
茶色くて、硬くて、香ばしい香りのするコーヒー豆。
この姿からは、なかなか想像がつきませんよね。
でも実は、私たちが毎日飲んでいるコーヒーは、真っ赤な果実の種なんです。
その果実の名前は「コーヒーチェリー」。
「フルーティ」「ベリーのような」と表現されるコーヒーがあるのも、コーヒーが果実から生まれるからこそ。
今日は、コーヒーの原点であるコーヒーチェリーのことを一緒に見ていきたいと思います。
知ると、いつもの一杯がちょっと違って感じられるかもしれません。
コーヒーチェリーって、どんな果実?

コーヒーチェリーは、コーヒーノキという植物に実る小さな果実です。
熟すと真っ赤になり、見た目も大きさもさくらんぼによく似ています。
だから「チェリー」と呼ばれるようになったんですね。
直径は1〜1.5cmくらい。
手のひらに乗せると、ころんとした可愛らしい姿をしています。
コーヒーノキはアカネ科の植物で、花が咲くときには、ジャスミンに似た甘い香りが漂います。
真っ白な小さな花が枝いっぱいに咲く様子は、産地ではとても美しい光景なのだそうです。

花が咲いてから果実が熟すまでは、およそ8〜9ヶ月。
緑色の実が少しずつ黄色くなり、やがて真っ赤に色づいていきます。
じっくりと時間をかけて、甘みや風味が育っていくんですね。
ちなみに、コーヒーノキには主に2つの種類があります。
香り高くフルーティな風味が特徴の「アラビカ種」と、力強い苦味とコクを持つ「カネフォラ種(ロブスタ)」。
私たちがスペシャルティコーヒーとして楽しむのは、ほとんどがアラビカ種のコーヒーです。
赤い実の中に、コーヒー豆がある
コーヒーチェリーを指で割ってみると、中からコーヒー豆が現れます。

果実の中身は、外側からこんなふうになっています。
まず、一番外側を覆っているのが「外皮」。
熟すと赤く(品種によっては黄色く)色づく、果実の表面の薄い皮のことです。
その内側には「果肉」があります。
食べてみると、ほんのり甘くて少し酸味がある。
ただ、果肉の部分はとても薄いので、フルーツとして楽しむにはちょっと物足りない感じです。
この果肉は「ミューシレージ」とも呼ばれていて、少しねっとりとした質感があります。
実は、この果肉がコーヒーの風味に大きく関わっているんですよ。(詳しくは後ほどお話ししますね)
さらに内側には「パーチメント」という層があります。
薄い殻のようなもので、種子を守る役割を担っています。
そして、そのパーチメントの中に入っているのが、私たちがよく知る「コーヒー豆」です。
正確には、コーヒー豆は果実の「種子」。
種子の表面には「シルバースキン」と呼ばれる 薄い膜がついています。
焙煎したコーヒー豆に、ときどき薄皮が残っていることがありますよね。
あれがシルバースキンです。
ひとつの果実の中には、通常2粒の種子が入っています。
平らな面を向かい合わせにして、仲良く並んでいるんですね。
まれに1粒だけが丸く育つことがあり、それは「ピーベリー」と呼ばれます。
味わいが凝縮されると言われ、希少な豆として特別に扱われることもあるんですよ。
赤く熟した実だけを、丁寧に摘む

コーヒーチェリーは、熟し具合がとても大切です。
完熟した実からは、甘みがあってバランスの良いコーヒーが生まれます。
一方、熟し切っていない実からは、酸味が強く、味わいが尖ったコーヒーになりやすいのだそうです。
だから、品質の高いコーヒーを作る産地では、赤く熟した実だけを選んで、人の手で一粒一粒摘み取ります。
同じ枝でも、実の熟し具合はバラバラ。
何度も農園を回りながら、ちょうどいいタイミングの実だけを収穫していくんですね。
ブラジルのような大規模農園では、機械で一気に収穫することもありますが、山の斜面にある小さな農園では今も手摘みが基本です。
こうした手間ひまが、おいしいコーヒーを支えているんですね。

機械で収穫する様子
コーヒー豆になるまでの旅路
収穫されたコーヒーチェリーは、いくつかの工程を経てコーヒー豆になっていきます。
まず、果肉や皮を取り除く「精製」という作業があります。
この精製の方法によって、コーヒーの味わいが大きく変わってくるんです。
代表的な方法は「ウォッシュド」と「ナチュラル」の2つ。
ウォッシュドは、水を使って果肉を洗い流す方法です。

果肉を早い段階で取り除くので、すっきりとした、クリアな味わいに仕上がりやすくなります。
豆そのものの個性が際立つ精製方法ですね。
一方、ナチュラルは、果実のまま天日で乾燥させる方法。

果肉がついたまま乾燥させることで、果肉に含まれる糖分や有機酸が種子に染み込んでいきます。
そのため、フルーティで甘い風味が生まれやすくなるんです。
精製が終わると、乾燥させて「生豆」の状態に。
この生豆は薄い緑色をしていて、まだ私たちが想像するようなコーヒーらしい香りはほとんど感じられません。

そして、この生豆を焙煎することで、私たちがよく知る茶色いコーヒー豆へと変わっていきます。
だから「フルーティ」な味がするんです

さて、ここまで読んでくださったことで、色んなことに気づかれたかもしれません。
コーヒーの味わいを表すとき、「フルーティ」「ベリーのような」「柑橘系の」 といった言葉がよく使われますよね。
これは、コーヒーが果実の種だからこそ生まれる味わいなんです。
コーヒーチェリーの果肉には、クエン酸やリンゴ酸、乳酸といった有機酸、それに糖分がたっぷり含まれています。
これらの成分が種子に影響を与えて、焙煎によって複雑な風味へと変化していくんですね。
特にナチュラル精製のコーヒーは、果肉と一緒にじっくり乾燥させるため、ベリーや熟した果実のような甘い香りが際立ちます。
私たちFUKUSUKE COFFEEでも、ナチュラル精製コーヒーをお届けすることがあります。
特に、エチオピア産のナチュラル精製のコーヒーは、ブルーベリーやストロベリーのような華やかな果実味を感じるようなものも。
初めて飲まれた方から「コーヒーなのに、こんな味がするんだ」と驚きの声をいただくこともあるんですよ。
その「こんな味」の正体は、赤い果実であるコーヒーチェリーの名残なのかもしれません。
果肉も、大切に活かされています
コーヒー豆を取り出した後の果肉や外皮。
以前は廃棄されることが多かったのですが、近年では「カスカラ」として活用される機会が増えています。
カスカラとは、乾燥させた果皮のこと。
お湯を注ぐと、ハイビスカスティーのような少し酸味のある甘い風味が楽しめます。
エチオピアでは「キシル」、イエメンでは「ギシル」と呼ばれ、産地では古くから親しまれてきた飲み方なのだそうです。
コーヒー豆だけでなく、果実全体が活かされている。
そんな、果実であるコーヒーチェリーのことを知ると、一杯のコーヒーがより愛おしく感じられるかもしれませんね。
知ると変わる、いつもの一杯

コーヒーは果実の種。
この事実を知っていると、コーヒーの味わいを少し違った目線で楽しめるようになります。
「あ、このコーヒー、ベリーっぽい味がするな」
そう感じたとき、それは赤いコーヒーチェリーの記憶なのかもしれない。
そんなふうに想像してみると、いつもの一杯が少しだけ特別に思えませんか?
お店では、産地や精製方法の違いによるさまざまな味わいのコーヒーをご用意しています。
「フルーティな味わいを試してみたい」という方には、ナチュラル精製のコーヒーや、浅煎りコーヒーがおすすめです。
「コーヒーらしさも大切にしながら、フルーティな味わいを楽しみたい」そんな方にもぴったりな、深煎りのコーヒーまで幅広くご用意しております。
どんなコーヒーを選べばいいか迷ったときは、お気軽にご相談くださいね。
一緒にぴったりの一杯を見つけましょう。
コーヒーの世界は、知るほどに広がっていきます。
この読みものが、あなたの日々のひとときを 少しでも豊かにするきっかけになれば、私たちもとても嬉しく思います。
あなたのことも、教えてください
FUKUSUKE COFFEEの読み物は、私たちが一方的に「伝える」ためのものではなく、みなさんと一緒につくっていきたいと考えています。
・このコーヒー、どう選べばいい?
・プレゼントで失敗しないコツを知りたい
・浅煎りって、正直よくわからない
・こんな話、読んでみたい
・最近こんなことで悩んでいます
などなど、どんな小さなことでも大丈夫です。
ふと感じた疑問や、知りたいこと、悩んでいることを、そっと教えてください。
いただいたお声は、次の読みものや商品づくりのヒントとして、ひとつひとつ、大切に活かしていきます。

FUKUSUKE COFFEE ROASTERY 愛知県安城市から”福を届ける”コーヒーロースタリー


コメント