コーヒー豆のパッケージや、カフェのメニューで見かける「フェアトレード」や「ダイレクトトレード」という言葉。
なんとなく「生産者にやさしい取引」というイメージはあるけれど、 ふたつの違いをはっきり説明できるかと聞かれると、ちょっと自信がない。
そんなふうに感じたこと、ありませんか?
実は私たちのお店でも、お客様から 「フェアトレードとダイレクトトレードって、同じものですか?」と聞かれることがよくあります。
どちらも、コーヒーをつくる人たちの暮らしを大切にしたいという想いから生まれた仕組み。でも、そのやり方はずいぶん違います。
今回は、このふたつの言葉の意味と違いを、できるだけわかりやすくお話ししてみますね。
コーヒーの取引に「しくみ」が必要な理由

まず、少しだけ背景からお話しさせてください。
コーヒー豆が育つのは、赤道をはさんだ熱帯の地域。エチオピア、コロンビア、グアテマラといった、いわゆる発展途上の国々がほとんどです。
ところが、コーヒー豆の価格が決まるのは、ニューヨークやロンドンの国際市場。 農家さんの手間や生活費とは関係なく、投機的な動きで価格が乱高下することもあります。
つまり、どれだけ丁寧にコーヒーを育てても、市場の都合で収入が大きく減ってしまうことがある。
子どもを学校に通わせられなくなったり、 生活そのものが立ち行かなくなったり。
そういった問題を「なんとかしたい」という気持ちから、 フェアトレードやダイレクトトレードという取引のしくみが生まれました。
フェアトレードとは

フェアトレードを直訳すると「公正な貿易」。
その名のとおり、コーヒーをつくる人と買う人が、お互いにとって公正な条件で取引できるようにするための認証制度です。
具体的にどんなしくみかというと、国際フェアトレード機関が最低価格を決めています。
たとえばアラビカコーヒーの場合、1ポンドあたり140USセント(有機栽培ならさらに30USセント上乗せ)が最低価格として保証されます。
どんなに国際市場の価格が下がっても、この最低価格より安く買い叩かれることはない。
農家さんにとっては、いわばセーフティネットのような役割ですね。
それだけではありません。最低価格とは別に「プレミアム」と呼ばれる奨励金もあって、生産者の組合が学校や病院をつくったり、生産設備を整えたりするために使えるようになっています。
フェアトレードの認証を受けるには、経済面、社会面、環境面で定められた基準をクリアする必要があります。認証を取得した商品にはフェアトレードマークがつくので、私たちがお店で見かけたときにもひと目で判断できるというわけです。
ダイレクトトレードとは

一方のダイレクトトレードは、認証制度ではありません。
文字どおり、コーヒーの生産者とロースター(焙煎所)が、仲介業者を通さずに直接やりとりをする取引のかたちです。
日本の農産物でいえば「農家直送」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
ダイレクトトレードでは、ロースターが実際に産地に足を運びます。農園を訪れ、生産者と顔を合わせ、コーヒーの品質を自分の目と舌で確かめる。
そのうえで、品質に見合った価格を生産者と直接話し合って決めます。
認証機関が間に入るわけではないので、決まったルールやマークはありません。 そのかわり、ロースターと生産者の間にある信頼関係そのものが、取引の基盤になっています。
品質のよいコーヒーには、それに見合った高い価格が支払われる。 生産者にとっては、いい豆をつくればつくるほど正当に評価されるしくみです。
ふたつの違いを整理してみると
ここまでの話を、少し整理してみましょう。
フェアトレードは「認証制度」。 第三者の機関が基準を設けて、最低価格を保証する。 農家さんの暮らしを守るためのセーフティネットとしての役割が大きい取引です。
ダイレクトトレードは「関係性にもとづく直接取引」。 ロースターと生産者が顔の見える関係を築きながら、 品質と価格を直接話し合って決める。 いいものをつくる意欲が、そのまま収入につながるしくみです。
フェアトレードが生産者の「最低限の生活」を守ることに力点を置いているとすれば、 ダイレクトトレードは「品質への正当な対価」を通じて生産者の暮らしを豊かにすることに重きを置いている。
そんなふうにとらえると、違いが見えやすくなるのではないでしょうか。
どちらが「よい」ということではなく

ここでひとつ、お伝えしたいことがあります。
フェアトレードとダイレクトトレード、どちらが正しいとか、どちらが優れているとか、そういう話ではないんです。
フェアトレードは、世界中の多くの小規模農家を制度として守ることに大きな力を発揮しています。 認証マークがあることで、消費者が安心して選べるという意味でも、とても大きな存在です。
一方でダイレクトトレードは、認証にかかる時間やコストが生産者の負担にならないという面があります。 小さな農園でも、品質さえよければ直接つながれる。 そこに可能性を感じているロースターは、日本にもたくさんいます。
なかには、フェアトレードとダイレクトトレードの両方を取り入れている会社もあります。 それぞれのよさを活かしながら、生産者との関係を築いているんですね。
大切なのは、「生産者の暮らしを大切にしたい」という想いの部分。 そこは、どちらも同じです。
一杯のコーヒーの「向こう側」を想像してみる

フェアトレードやダイレクトトレードという言葉を知ると、コーヒーを選ぶときの目線が少しだけ変わるかもしれません。
パッケージに書かれた生産者の名前や取引方法に、ふと目が止まる瞬間があるかもしれない。
「この一杯の向こう側には、どんな人がいるんだろう」
そんなふうに思いをめぐらせる時間も、コーヒーを楽しむことの一部だと、私たちは思っています。
用語がわかると、コーヒーの世界はもう少しだけ広がります。 わからないことがあったら、いつでも気軽に聞いてくださいね。
私たちも、一杯のコーヒーを通じて、つくる人と飲む人の間にあるあたたかいつながりを、これからも大切にしていきたいと思っています。
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