Fukusuke Coffee

テロワールとは|同じ国でも地域で変わる味わい

「エチオピアのコーヒーが好き」と気づいたとき、 ふと不思議に思ったことはないでしょうか。

同じエチオピアなのに、イルガチェフェとグジでは味がぜんぜん違う。 同じコロンビアなのに、ウィラとナリーニョでは印象が変わる。

「国が同じなのに、なぜこんなに味が違うんだろう」

そんな疑問の答えが、「テロワール」という考え方にあります。

この言葉を知ると、コーヒーの味わいの見え方が少し変わるかもしれません。 今日はそんなお話を、ゆっくりしていきますね。


テロワールって、なんだろう

テロワールはもともとフランス語で「土地」を意味する言葉です。 ワインの世界で長く使われてきました。

「同じブドウ品種でも、育った畑によって味が変わる」

この現象を説明するために生まれた概念なんですね。

コーヒーの世界でも、まったく同じことが起きています。 土壌、気候、標高、降水量、日当たり。 その土地を取り巻くあらゆる環境が、コーヒーの味わいに影響を与える。

つまりテロワールとは、 「その土地だからこそ生まれる、コーヒーの個性」のことです。

ちょっと想像してみてください。

日本のお米も、魚沼産と他の産地では味が違いますよね。 同じコシヒカリでも、育った土地の水、気温、土壌によって甘みや粘りが変わる。 コーヒーも、まさにそれと同じなんです。


味わいを変える4つの要素

では、具体的にどんな環境の違いがコーヒーの味を変えるのか。 大きく分けると4つの要素があります。

標高のこと

標高が高い場所では、昼と夜の気温差が大きくなります。

日中は太陽をたっぷり浴びて養分を蓄え、 夜になると気温がぐっと下がって、コーヒーチェリーの成熟がゆっくり進む。 この「じっくり育つ時間」が、酸味の複雑さや甘みの深さにつながります。

たとえばエチオピアのイルガチェフェは標高1,750〜2,200mほど。 標高が高い産地のコーヒーほど、実が密に詰まっていて、 華やかで複雑な風味を持つ傾向があります。

FUKUSUKE COFFEEでカッピングをしていても、 標高の高い産地の豆は、口に含んだ瞬間の「情報量」が違うなと感じることが多いです。

土壌のこと

コーヒーノキは根から水分と一緒にミネラルを吸い上げます。 だから、土に含まれる成分がそのまま豆の風味に影響するんですね。

火山性の土壌はミネラルが豊富で、水はけもよい。 中米のコスタリカやグアテマラ、東アフリカのエチオピアやケニアには 火山性の土壌が広がっていて、これがクリーンで明るい酸味の源になっていると言われています。

一方で、ブラジルのように粘土質を多く含む土壌では、 どっしりとした甘みやボディ感のあるコーヒーが育ちやすい。

土が変われば、味が変わる。 考えてみれば自然なことなのですが、 カップの中でそれを実感できるのは、ちょっとうれしい瞬間です。

気候と降水量のこと

コーヒーノキは、雨季に花を咲かせ、乾季に実を熟させます。 この雨と乾きのリズムが、コーヒーの味わいのバランスを左右します。

降水量が多すぎると水っぽい味になりやすく、 少なすぎると実が十分に育たない。 ちょうどよいバランスの場所で、おいしいコーヒーが生まれます。

日当たりの加減も大切で、 直射日光が強すぎる場所では「シェードツリー」と呼ばれる日陰の木を植えて、 コーヒーノキに届く光を調整している農園もあります。

微気候(マイクロクライメイト)のこと

同じ国の中でも、山の向きや谷の深さ、川からの距離によって ごく狭い範囲で気候が異なることがあります。 これを「微気候(マイクロクライメイト)」と呼びます。

テロワールの面白さは、まさにここ。

「同じ国なのに、隣の地域とは味が違う」という現象は、 この微気候の違いが大きく関わっています。


同じエチオピアでも、こんなに違う

テロワールの面白さを感じるのに、 エチオピアほどわかりやすい国はないかもしれません。

エチオピアはアラビカ種コーヒーの原産地。 国土の大部分が高地で、地域ごとにまったく異なる風味のコーヒーが生まれます。

お店でも「エチオピアのイルガチェフェ」と「エチオピアのグジ」を 並べて飲んでいただくと、「え、同じ国なの?」と驚かれることがあります。

少しだけ、代表的な地域の特徴をご紹介しますね。

イルガチェフェ

標高1,750〜2,200mの高地に位置し、豊かな水資源に恵まれた地域。 「イルガチェフェ」は現地の言葉で「湿地と草原」という意味があるそうです。

レモンやジャスミンのような華やかさ、紅茶を思わせる上品な口当たり。 初めて飲んだとき、「これが本当にコーヒー?」と感じる方も少なくありません。

水洗式(ウォッシュド)で精製されることが多く、 クリーンで繊細な風味が際立つのが特徴です。

グジ

イルガチェフェのすぐ南東に位置する地域。 以前はシダモの一部として流通していましたが、 近年その品質の高さが認められ、独立した産地として注目されるようになりました。

イルガチェフェに比べると、酸味と甘みがしっかりしていて、 ベリー系の果実味やほのかなスパイシーさを感じることがあります。 力強さの中にも華やかさがある、そんな印象のコーヒーです。

お店でカッピングしていると、 イルガチェフェが「白い花」なら、グジは「赤い果実」。 そんなイメージが浮かぶことがあります。

シダモ

エチオピア南部に広がる広大な地域。 実はイルガチェフェもグジも、もともとはこのシダモの一部でした。

柑橘系の酸味とまろやかな甘み、バランスのよい味わい。 華やかさではイルガチェフェに、力強さではグジに一歩譲りますが、 安定した品質と飲みやすさで根強い人気があります。

近年はCOE(カップ・オブ・エクセレンス)でも上位入賞するロットが増えていて、 この産地の実力が改めて見直されています。


他の国でも、テロワールは感じられる

テロワールの違いが表れるのは、エチオピアだけではありません。

コロンビアでは、ウィラ県とナリーニョ県で味わいの傾向がかなり異なります。 ウィラは甘みが豊かでバランスがよく、 ナリーニョは標高が高いぶん、明るい酸味と複雑さが際立つ。

ケニアも、ニエリとキリニャガでは個性が違います。 同じケニアの「ベリー系の華やかさ」という大きな特徴を持ちながら、 その中にも地域ごとの色がちゃんとある。

ブラジルのセラード地域とミナスジェライス州の他の地域でも、 ボディ感や甘みの出方に違いが生まれます。

こうした違いに気づき始めると、 コーヒーの選び方が「国」から「地域」へと広がっていきます。


テロワールだけでは語れないこともある

ここで少し正直なお話もさせてください。

テロワールはコーヒーの味わいに深く関わっていますが、 それだけで風味のすべてが決まるわけではありません。

収穫後の精製方法(ナチュラルかウォッシュドか)、 品種の違い、乾燥のしかた、そして焙煎。 こうした「人の手」による工程も、味に大きな影響を与えます。

同じ農園、同じ区画のコーヒーチェリーでも、 ナチュラルで精製すれば果実味が豊かに、 ウォッシュドで精製すればクリーンで繊細な味わいになる。

テロワールは、あくまで風味を形作る要素のひとつ。 でも、とても大きなひとつです。

「この味わいは、どんな土地から生まれたんだろう」

そう想像しながら飲む一杯は、 きっといつもとは少し違った味がすると思います。


テロワールを感じてみるための、小さな提案

テロワールの違いを体感するのに、一番おすすめなのは「飲み比べ」です。

同じ焙煎度のコーヒーを2種類用意して、交互に飲んでみてください。 できれば同じ国の、異なる地域のものだと違いがわかりやすいです。

最初はうまく言葉にならなくても大丈夫。 「こっちの方がすっきりしているな」 「こっちは甘みが強い気がする」 そんなふうに感じることが、テロワールを体感する第一歩です。

FUKUSUKE COFFEEでも、 産地の異なるコーヒーを並べてご紹介していることがあります。 気になるものがあれば、お気軽にお声がけくださいね。

「この豆、どんな土地で育ったんですか?」

そんな会話から、コーヒーの楽しみがまたひとつ広がるかもしれません。


おわりに

テロワールという言葉を知ると、 コーヒーの「国名」の奥にある世界が少しだけ見えてきます。

同じエチオピアでも、イルガチェフェとグジでは個性が違う。 同じコロンビアでも、地域が変われば味わいが変わる。

それは、その土地の標高、土壌、気候、水。 自然が長い時間をかけて育んだ、かけがえのない個性です。

次にコーヒーを選ぶとき、 産地の欄に書かれた「地域名」にちょっと目を留めてみてください。

その名前の向こうに、コーヒーが育った風景が広がっています。

一杯のコーヒーが、遠い国の小さな地域と自分をつないでくれる。 そんなふうに感じていただけたら、とてもうれしく思います。


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