Fukusuke Coffee

ハンドドリップとエスプレッソ|抽出原理の違いを知ろう

「ハンドドリップとエスプレッソって、なにがそんなに違うんですか?」

お店でもときどき聞かれる質問です。

どちらもコーヒー豆から淹れているのに、出来上がりはまるで別もの。ハンドドリップはすっきり透き通った一杯だし、エスプレッソは小さなカップにとろりと凝縮された液体。

この違い、じつは「お湯をどんな力で粉に通すか」というところから生まれているんです。

今日はそのあたりを、少しだけ掘り下げてお話ししてみますね。


そもそも「抽出」って何が起きているのか

コーヒーの抽出って、やっていることはとてもシンプルです。

焙煎した豆を挽いて粉にして、そこにお湯を当てる。すると、粉のなかに閉じ込められていた甘み、酸味、苦味、油分、香りの成分が、少しずつお湯のなかへ出ていきます。

これが「抽出」です。

ここまでは、ハンドドリップでもエスプレッソでも同じ。

じゃあ何が違うのかというと、お湯が粉を通り抜けるときにかかる「力」がまったく違うんです。


ハンドドリップを動かしているのは、重力

ハンドドリップでは、お湯を粉の上からそっと注ぎますよね。

注いだお湯は重力に引かれて、粉のあいだをゆっくりと下に落ちていきます。ペーパーフィルターを通り抜けて、サーバーやカップへ。

このとき、お湯を動かしている力は重力だけ。

だから抽出には2分から4分くらいかかります。その時間のなかで、お湯と粉がじっくり触れ合いながら、成分がじわじわと出ていくんですね。

FUKUSUKE COFFEEの簡単レシピだと、粉10gにお湯150g、85℃。挽き目は中挽きです。

中挽きにするのは、重力で落ちるスピードとちょうどいいバランスだから。細かすぎるとお湯が詰まって渋みが出るし、粗すぎるとお湯が素通りして薄くなってしまいます。

お湯の注ぎ方や挽き目で、落ちるスピードを自分の手で調整できる。ここがハンドドリップの面白いところなんですよね。


エスプレッソを動かしているのは、圧力

エスプレッソは、仕組みがまるで違います。

エスプレッソマシンは、約9気圧という強い圧力でお湯を粉に押し通すんです。

9気圧というと、水深90メートルくらいの水圧に相当する力。日常では体感することのない、かなり強い力がかかっています。

この圧力があるからこそ、極細挽きの粉をぎゅっと押し固めた層を、お湯がわずか25〜30秒で通り抜けられる。重力だけでは絶対に無理なスピードです。

しかもエスプレッソは、ボタンを押したら一気に最後まで抽出が進みます。ドリップのように「途中で注ぐのを止めて、また注いで」ということができません。一定の圧力で、一息に。


「重力」と「圧力」、ここがいちばんの違い

あらためて並べてみると、ふたつの抽出はこう整理できます。

ハンドドリップは、重力に任せてゆっくり引き出す。

エスプレッソは、圧力で一瞬にして押し出す。

同じ「お湯を粉に通す」という行為なのに、動かしている力の大きさがまったく違うんです。だから出来上がりの味わいも、当然変わってきます。


挽き目が違う理由も、ここから分かる

ハンドドリップは中挽き、エスプレッソは極細挽き。この違いも、抽出原理を知ると腑に落ちます。

コーヒーの成分がどれだけ溶け出すかは、「お湯と粉が触れている時間」と「粉の表面積」の掛け合わせで決まるんです。

ハンドドリップは2〜4分もお湯と粉が触れ合います。時間が長いぶん、粉はそこまで細かくしなくても十分に成分が出てくれる。

エスプレッソは25〜30秒しかありません。この短さで必要な成分を引き出すには、粉の表面積をとにかく増やす必要があります。だから極細挽きにするんですね。

短い時間を、表面積で補っているわけです。


クレマが生まれるのも、圧力のおかげ

エスプレッソの表面に浮かぶ、あのきめ細かいゴールドブラウンの泡。クレマと呼ばれるものです。

あれは、高い圧力によってコーヒーの油分や二酸化炭素がお湯のなかに溶け込んで、カップに出た瞬間に一気に放出されて生まれます。

炭酸水のペットボトルの蓋を開けたとき、シュワッと泡立ちますよね。あれと似た原理です。

ハンドドリップでは圧力がかからないので、クレマは生まれません。そのかわりペーパーフィルターが油分の多くを吸着してくれるので、すっきりクリアな口当たりになるんです。

エスプレッソのとろりとした質感と、ハンドドリップの透明感。この違いも、圧力があるかないかで決まっています。


カフェでのラテやカプチーノも、この延長線

カフェでラテやカプチーノを頼むと、あれはエスプレッソにミルクを合わせたものですよね。

エスプレッソの凝縮された味わいがミルクの甘みと混ざり合って、ハンドドリップにミルクを入れるのとはまた違った厚みが生まれます。あの独特のコクも、圧力抽出があってこそなんです。

そう思って飲んでみると、ちょっと味わい方が変わるかもしれません。

ちなみにFUKUSUKE COFFEEはハンドドリップ、急須コーヒー、エスプレッソなどなど様々な抽出方法でお楽しみいただけるようにしています。

ドリップとエスプレッソでは、豆の選び方も挽き目の調整感も、味の組み立て方も全然違うので、毎日それぞれの抽出方法に合わせて調整を行なっています。


同じ豆から、違う表情を引き出す

ハンドドリップとエスプレッソ。どちらが良い悪いではなく、コーヒー豆の成分をどう引き出すかのアプローチがまるで違うんですよね。

重力でゆっくり引き出すか、圧力で一瞬にして凝縮するか。

この仕組みを知っておくと、普段飲んでいるコーヒーの味わいに、ちょっとだけ解像度が上がるのではないでしょうか。

いつものハンドドリップで一杯を淹れるとき、お湯が粉のあいだをゆっくりと通り抜けていく様子を眺めながら、「いま、重力が味をつくっているんだな」と思ってみてください。

そんな小さな知識が、日々の一杯をほんの少し豊かにしてくれたらうれしいです。


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